『案外人いるねー』



何を企んでいるのか全く分からないが、俺の分のチケットまで買ってくれた

とにかく騙されることはない…と思いたい

カップルやら友達集団に家族が思ったよりもいた。

だが、よく考えてみれば女性の二人組はいそうだが、俺と阿含のように男性が二人きりで来てるのはあんまりいないな

阿含もそれに気付いたのか少々苛立ったような顔を見せる



『全く、せっかく来たんだから少しくらい楽しそうな顔しなよ』


「俺がそんなツラするかと思うか」


『思わないけどなんか俺が悪いみたいじゃん』


「実際そうなんだけど」


俺のせいにした最後の言葉は無視して、パークの中で一番大きいジェットコースターを目指して一人で歩き始めると素直についてくる

ついてくるものの、顔はやっぱり険しく、子供が近くにいるたびスタスタ避けられる

ですよねぇ


ジェットコースターの前には列はあったものの、待ち時間はさほどない

一番大きいだけあって乗るのが怖い人がいるんだろう



「来て早々コレかよ」


『目覚まし』


「吐いたら潰す」


『大丈夫。そっちこそ吐きなさんなー』


やっと俺たちの番になったら、荷物を預け、阿含は俺の前で初めてサングラスを外した

隣同士の席に座り、安全確認をする



『へぇ…やっぱりグラサン取ったら雲水君に似てるねぇ』


「今テメェの顔に俺の手が届かないのが幸いだな、届いてたら躾けてやってたのによ」


『あれ?もしかして嫌?』


「いいわけあるか」


『いいじゃない美形だし』


一緒に寝るつもりはないけど、と絶対きいてくるだろうことを防止するため付け加える


ガタガタと上がるカートから視線を下に向けると、車が豆粒のごとく

迫力に身震いする


そんなことに気を取られてると、急に胃が軽くなった感じがして視界がぼやけ、高速でコースターが走り出した


俺は他多数の客とともに両腕を上に放り投げ、笑う

よく考えてみれば遊園地なんて初めて

孤児院にいた頃は興味なかったし、孤児院にいる子を皆遊園地につれていける金なんてそうそうない

遊園地なんてテレビのCMや番組、それか通り過ぎるくらいのものだった。

サイクリングしてる時は観光だけで、お土産とかそんな余計な金を使う余裕なんてなかった


初めて乗るアトラクションの疾走感が体に刻まれるような気がして何かを成し遂げたかのような達成感を覚える




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