『うぅ…わっかんない…』





「だ、大丈夫?」




授業で受ける勉強は簡単でいいんだけど




「邪魔すんな糞マネ。糞チビ共を見とけ」



「でもなんかすごく苦しそう」



「罰だ」



「なんの?」



「首突っ込んでねーでさっさと仕事しろ」



『もうやだああ!頭痛い!!』



変な図形など、見知らぬ単語がずっしり詰まった、さほど厚くはないくせに理解不能のこの本

どうやら今朝のジョークの罰として妖一の変なスポーツのルールを覚えなければ、俺の自転車をバラって捨てると脅されて今に至る



『くぅ…今に見てろー…』



必死に意識を保つがこんなの教科書と同じだ

真面目に読んでられない


船を漕ぎ始めた頃、ズボンのポケットから小さい振動を感じ、携帯に手をかける


阿含からだ




『(あーもうなんなんだよー)』




欠伸をしながら席につく

同時に送られたメールを開いた





゛電話しろカス゛




あまりにもシュールすぎるものだから声出して笑ってしまう

電話されたかな、と着信歴を見たが全然電話かけられていない

この仔、俺が自分から電話すると思ってる




『先生、俺腹痛い』



「はぁ?」



『マジ…ちょ、ほんと…!ぁああ吐く…っ』




腹抱えて手を口に当てる

演技は得意なつもり




「わ、わかった!早く保健室行け!」



『はーい』




教室から出ていくついでにふと妖一の顔を見てみると何してんだとでも言うかのような眼差し

だけど彼はあえて何も言わない

だから俺も気にせず校舎を出る




誰にも気づかれないように校舎の裏で登録リストの一番上に出る彼の名前を押す




「あ゛ーったく。電話かけんのにどんだけ時間かけてんだカス」



『ごっめーん。俺だって電話する気なんてサラサラなかったけどかけてあげてんだよ?』



「ハッ、誰に口きいてんだシメるぞ。」




『こんごーあごん君。 で、何?』




「今からお前迎えに行くからよ、裏門で待っとけ」



よく携帯に耳を当ててみると、後ろに車の音とかが聞こえる

もう来てるってワケか







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