『今日は行かなーい』 「何言ってんだ」 『学校行かなーい』 「秘書の仕事があるだr『今日はまもちゃんに頼んでくれない?二人結構仲良しじゃない、俺は今日忙しいの』 じゃ、と手を振ると自転車を制服の彼の反対方向を走らせる どうせ妖一の顔を見たら「仕方ない」と甘やかしてしまうから後ろを振り向かずにこぐ 実際、俺が忙しいハズない 最近学校に行きすぎて、自転車に乗ってどこか行くことが少なくなった 坂を登り、坂を下る 右曲がって、左曲がる 登校しなかった間を思いだす 自由だな、と笑う 空も晴れてる その下でアスファルトに影を作る木々の緑がパステルを効かせて、どこまでも行けるような気が湧く 昼は学生が少なく、子供連れのお母さんやお爺さんお婆さんを見かけた 幼稚園を通ったり、スーパーやコンビニを何回も通り、住宅街を出入りする 気づけば自分の影が極限まで伸びていて、空が紅と紫に染まってた 『また、案外遠くまで……』 地図を見ると、まだ東京内 『……来てないか…』 帰ろうかと自転車を来た道を辿るように方向を変える なんで戻ろうとするんだろう メリットは?俺何か得するの? もちろんしない。戻っても人しかいない。 このまま隣の県内まで行こうか? そんなことしたら何言われるかわからないや 『他人なのに…ねぇ』 方向を変えずにヤケクソで自転車をこいでも、真っ暗になった空は曇ってなんかいなかった prevnext |