テントを持ってこようとしたらそんなボロっちいもの家に入れるな、と捨てられた。

結構愛用していたが、テントは愛用するものじゃないな






『おっじゃっまっしまーす』





「ケケケ、返事なんて期待すんなよ」





『妖ちゃんは言ってくれないの?』





「俺が返事返してやると思ってるお前の頭はどうなってんだ」





靴を脱いで玄関にそろえる

案外大きいアパートに住んでるんだなぁ……

スーツケース一つ分もない荷物を持って妖一についていく







「テメーの寝床なんてソファーで充分だろ」




『いいよー』





荷物をそこらへんにおいて、すぐさまに風呂を使う。

礼儀とかなんとかそういうのがあったような気もするが、いちいち聞くのも面倒だから勝手に使う



久しぶりに浴びるシャワーと浸かる湯

いつ以来だろ、と思えば俺って結構清潔じゃなかったかも、と溜め息一つ

金がないから仕方ないか、と大きく伸びをして開き直る




洗って改めて気づくのは、髪も長くなったってこと

美容院行くのが面倒だったもんなぁ



関節をあちこちカキコキ鳴らして心地よさにウトウト船をこぐ

あー眠い、けど溺れたら妖一に迷惑そうだ


大体あったまったところで上がり、外の部屋の涼しさが気持ちいい











「テメーいつまで人の便所占めて―」






『ごめんねー』





急にドアが故障するくらいの勢いで開く音と共に聞き慣れた声

ドアはすぐに同じくらいの勢いで閉められた




自業自得、自業自得、と喉を鳴らす

スボン履いてたからまだましかな、と他人事のように思い、頭をタオルで拭く







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