「案外顔腫れてねーな。なんかムカつく」






『もう我侭だなぁ、左目も頬も額も腫れてるじゃない。おまけに鼻血もサービスしてるのにもっとほしいの?』






「俺は気絶させる派なんだよ」






『あら大胆』





まるで興味なくしたようなのに、未だに俺を殴り続ける

最初に妖一にさらわれた時に思い付いた選択肢をこの人はどっちともしようとしていることに気づく





肩に力が入らなくなり、情けなくぐったりとされるがままに


諦めにも似た脱力






「お前面白いな」




『ムカつくとか言ってたクセに』




「それは少し前のことだ。なぁ俺んとこに来ねぇ?」




『今の俺に選べるような選択肢はないと思うけど』





確かに、と彼は笑い、俺をまじまじと見ながらニヤニヤする

あれ、今度は視姦?


するとやっと胸倉を離し、彼は頭を悩ましげにポリポリ掻く






「あー、でもヤるにはちょっと無理だな。ボロボロの奴抱いても気持ち悪ぃし」




『俺もやられない方が都合いいね』




「運良かったな。まぁ次の機会に」




傍から見れば、普通に会話しあってる俺達はすごく気持ち悪いだろう

視界がまだ安定せず、力なくその場に座り込む

相手もしゃがみ、視線が合う





「お前はブスじゃねーしなぁ。名前何?」



『知らない人に勝手に名乗っちゃいけないって習ったの』




また一発殴られる

いい加減気が遠くなりそう




「俺金剛阿含っていうの、忘れんなよ。はい、これで知らない人じゃなくなっただろ」




『へー阿含かー。変わった名前』




「うるせーよ」





また叩かれる





「で、お前。別に悪用するほど俺暇してねーよ」




『ふーんそう。名前っていうの』




「苗字も言えよ」




『そんなのないよ。産みがわからないんだし』




清々しく言うと少し驚いたようだったけどすぐにあーそう、と生返事を返される





「あーあ、可哀そうに。捨て猫か。俺が拾ってやってもいいぜ?」




『生憎俺は一匹狼主義なんでね、あんまり深入りはしたくないんだ』




「やっぱムカつく」







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