テントを寝袋以外カラにし、自転車に乗る

暇だからだったのか、案外支度が早く済んだ





今日はなんてサイクリング日和なんだろう、と大きく腕を広げ、息を吸っては吐く

JRまでどんくらいだろう、と時間を気にせず自転車を自分にあったペースでこぐ











***











駅まで行くと数人ぐったりとめんどうなようで。

ははは、まるで俺みたい





それで肝心な電話をかけてきた本人がいない


暑苦しい男性と話すのは嫌だから、端っこにいた年下と思われる男の子を訪ねてみた







『ここのみんなって泥門のうめばと部?』






「う、うめばと…アメフト部のことじゃないんでしょうか…」





もじもじと気まずそうに俺から視線を逸らしながら言う






『じゃあ君も部員?』






「あ、は、はい…主務です」






『うわー、可愛い子がよくあんな変な人のとこの部活いたもんだね』





はははと笑うと、困ったように笑い、俯いた






『ごめん、急に迷惑だったね。悪気ないから』





「え!?いや、そういうのじゃなくて…!」





『君、名前は?』





ちょっとどうしようか、と思ったような顔は小さく「小早川瀬那…」と応える







『瀬那君かー。さっぱりした名前じゃない?俺名前。苗字ないよ。』





よろしく、と手を出すと慌てて少し震える手でそれを握り上下する

そして隣に腰をおろし、空を見上げる







「……(綺麗な人だなー……)」





瀬那君の視線に気づき、何?と聞けばなんでもない、と返される








『そうだ瀬那君』





「は、はぃ!?」





そんなに驚かなくても…と少し苦笑する






『こんな暑苦しい男の中だと何されるかわからないよね〜。携帯貸して』




「え?あ、はい…」




なんだか流されているような感じで携帯を出す

あーそれ良くない癖だな〜



と思いつつ、自分の番号を彼の携帯に登録する





『何かあれば言いなさいな。俺そこまで強くないけど』




プラスがあればなんとなく気分くらいは良くなるでしょ?と言えばありがつございます、と何回も頭を下げられる

やっぱりパシられてるのかな、そーゆーオーラむんむん










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