面白いとは思うものの、自分からつっかかろうとは思わない。 惚れた人は勝手に惚れてりゃいい。 女性にはズルい、男性には卑怯だと何度言われたことか。 知ったことではない。 授業中に大きな欠伸を放ち、猫のごとく背中を伸ばしては教科書を読んでいるかのように誤魔化し、机に突っ伏する 窓際で一番後ろ。 これよりいい席はないだろう 空が再び晴れ始めたと共に目を瞑って、先生の話しも外の雑音も遠ざかっていった *** 「おい」 授業の終了を告げる鐘がどっかから聞こえたかと思うと、聞き覚えのある声 起こしに来たのだろう、わざわざそんなことしなくていいのに それにまだ寝ていたい。確か今から昼休み……なのに周りに声をかけた本人以外の視線も感じる 密かに俺の寝顔が可愛いやらなんやら…そっちこそ可愛いこと言ってくれるじゃないの、と頭の中で言い返しながらも狸寝入りを続けた それより昼ご飯食べに行けよ… 「起きろ」 いやだ。 そういうかのようにびくともせず、気配で察せと心が叫ぶ 寝てるときって一番安らぐのに、なんでこうも邪魔されないといけないんだろう 『あぁぁいだだだだだ。 それ髪、痛いって』 何をしてくるかと思えば、髪を掴んで無理矢理上を向かせられる 声を上げていないからなのか、少し驚いた様子が彼以外の生徒からも見えた 「お前、この前の自転車男か」 『ん?あー。なんだ覚えてるんだね』 髪は掴まれたまま、返事を返す やっぱり頭痛い、と席から立ち上がる 俺の方が数センチ高い 見下ろされるのがいやだったのか顔を歪めた 「ケッ、来い」 来いとは言うものの、俺に拒否権はない どこかと長い腕がまた俺の髪を引っ張って教室から引きずり出される ついていくから頭離して、と頼んでも嫌だというように髪を掴む手に力が増した気がした prevnext |