そそくさとフィールドを軽い駆け足で横切っていくと、清十郎が近くなってくる俺を見てなんだか複雑そうな顔をした。


周りの王城の人に「なんで泥門の奴がいるんだ」っていう目がちらほら当てられたが別に無視しておけばどうにでもなるだろう。


そして、俺が目の前に来るまで目を合わせようとしなかった騎士の頭を小突く



「よっ」


少しびっくりした顔で小突かれたところを手で押さえる。


「………」


返事はこない。


「…おーい」


そういうと逆にうつむかれる。

ここまで来て改めて思うのだが、俺はこういう状態の人間とどう対応すればいいのかがさっぱりだった。

今までは普通に無視するってだけで済んだのに、今回ばかりそうはいかないらしい。


どーしたもんかなー…


「モシモシセージューローサーン」


彼の視線と同じ位置になるまでしゃがんで、顔を両手で挟んで無理矢理上を向かせる

なのにまだ視線を合わせようとしない。っていうか、必死で俺の顔を見ないように視線を泳がせてるって言った方が的確かもしれない。


「なんでこっちみないの」


「………見てるだろう」


「顔は向いてても目が見てないとそれ、見てるって内に入らないよ」



今清ちゃんは客席にいるあの子を見てる、と指摘すればその人から目をそらす

今度は芝生、と言ったらまた目をそらす



≪間もなく後半戦スタートです!≫



「ほら、行かなきゃ」


俺はここで見てるから、って言ったら、やっと視線が絡む

俺が相変わらずの気の抜けた顔で清十郎を見て、少し困った顔の清十郎が俺を見る。


無言で5秒ほど経ったら、「ありがとう」って言われて、優しく俺の両手をどかせてベンチから去って行った










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