メウ様


 一番心休まる場所はどこかと問われれば、間違い無く此処だと言う。
 それ程、赤司にとっては大事な場所だった。
「赤司っち、お疲れ様」
「ん……」
 自らの膝の上で目を閉じる赤司の前髪を指先で梳くように撫でる。
 百戦百勝を掲げ尚且つそのトップに立ち百人以上の部員を率いて全国の頂点に君臨する彼の心労は黄瀬には計り知れない。一体この体のどこにそんなエネルギーがあるのだろうかとさえ思う。
 部員たちが居なくなった部室で行われるこの行為は、二人だけが知る謂わば秘密である。長椅子に腰掛ける黄瀬のさして柔らかくもない太腿に頭を預ける赤司は無防備だ。黄瀬だけに見せる、黄瀬だけが知る姿に黄瀬の表情はふわりと柔らかくなる。
 本来ならば蒸しタオルでも用意すべきだろうが生憎その様な物はバスケ部の部室には無い。タオルはあっても蒸す事が出来ないのだ。だから代わりにと言うのも何だが、少しでも疲れが取れるようにと黄瀬は指先を揃えて閉じている瞼へそっと宛行う。
 じわり、と彼の体温が伝わる。ホットアイマスクとまでは行かないが、しかし体温の高い方である黄瀬の手は強ち遠からずと言った所だろう。

 一番心休まる場所はどこかと問われれば、間違い無く此処だと言う。
 それ程、黄瀬にとっては大事な場所だった。
「涼太、お疲れ様」
「ん……」
 自らの脚の間で目を閉じる黄瀬の後ろ髪を指先で梳くように撫でる。
 学業と部活とモデルと言う二足所か三足の草鞋と言っても過言では無い程の多忙さを抱えているのだ。そんな彼の抱える疲労は計り知れない。それなのに決して笑顔を絶やす事無く且つ泣き言すらも漏らさずに毎日を過ごすのだ。バスケのプレースタイルもそうだが彼のプロ意識には目を見張る物がある。
 生徒たちが居なくなった屋上で行われるこの行為は、二人だけが知る謂わば秘密である。フェンスに背中を預ける赤司の脚の間に身体を収まらせ抱き付くように腰に腕を回して眠る黄瀬は無防備だ。赤司だけに見せる、赤司だけが知る姿に赤司の表情はふわりと優しくなる。
 本来ならば冷やしタオルでも用意すべきだろうが生憎その様な物は学校の屋上には無い。自分のタオルはあっても冷やしに行く事が出来ないのだ。だから代わりにと言うのも何だが、少しでも疲れが取れるようにと赤司は手の平を指通りの良い前髪に隠れている額にそっと宛行う。
 ひやり、と彼の体温が伝わる。冷却シートとまでは行かないが、しかし体温の低い方である赤司の手は強ち遠からずと言った所だろう。

 こうして互いに互いの体温を相手に送る事で安心感を得るのだ。身体を借りて眠りにつく方は勿論、膝枕をする黄瀬も抱き枕になる赤司も、実の所それだけでも充分安息の効果は出ている。
 ありがとう、なんて言葉は要らない。丸一日のオフも要らない。疲労回復効果のあるハーブティーだって要らない。
 必要なのは、安まる場所に《彼》が居ると言うこと。それだけだ。
 




【甘/帝光中】
会話が少ないっ!すみませんっ!
あれ。どうしてこうなった?そしてこれ甘い……のか?
レム睡眠になれるのはお互いが傍に居るときだといいなと言う妄想を込めてます。
目を覚ました時に好きな人の顔が其処にあって好きな人の匂いがあって好きな人の温もりがあると言うのが何よりも幸せなんだと思います。
リクエストありがとうございました。



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