ユ。様


「さぁて、どうしようか」
「お、お手柔らかにお願いします」
 愉しげに弾む声とは反対に沈みきった緊張気味な声が続く。
「この間は徹底的に扱いたから今日は別の物がいいのだよ」
「今日はオレに任せろ。枯れるまで泣かせてやるよ」
「矢張りここは元教育係としてボクが」
「赤ち〜ん。オレ、黄瀬ちん食べたい」
 部室で今からまるで集団虐めに遭わせますといった空気が流れているが、実際は合意の上である。
 今回の練習試合で黄瀬だけがノルマに一点届かず、この度恒例のヤキ入れを行われることとなったのだ。
「よし、敦の意見を採用」
 ピリピリとした緊張空間に似つかわしくない間延びした声で「やったー」と紫原が言う。赤司の決定には逆らえないのか青峰は舌打ちをし、黒子と緑間は仕方がないと息を吐いた。只一人、黄瀬だけは恐怖故に小刻みに震えている。
「但し、《摘み食い》で済ませろ」
「ままままま待って待って! イヤっスよオレ! 痛いのいやっス! 痛いくらいならキツい方がまだマシっス!」
「往生際が悪ぃぞ黄瀬ぇ」
「バカめ。お前が考えているような事はしないのだよ」
「斜め上を行きます」 
「何かもう良く分かんないっスけど取り敢えずみんなの目が怖いっス!」
 ガタイの良い青峰と紫原に両腕を掴まれ最早逃げ出す事は不可能である。備え付けの長椅子に座らせれば、どうやら腹を括ったらしい。カタカタ震えやや涙を目に溜めながらも五人を見据えた。
 なけなしの抵抗なのか、その目が宿す光は非常に好戦的である。
「よし、黄瀬。お前先ずはコレを着けろ」
「はい?」
 そう言って青峰に手渡されたのは淡い茶色の犬耳が付いたカチューシャと同色の尻尾付きベルトである。訝しい目で彼を見ながらもそれらを装着する。
「じゃーオレはこれ〜。はい、黄瀬ちん、あーん」
 差し出されたまいう棒を口にくわえると「待て」と緑間が言うものだから唇に挟んだ状態で静止する。すると緑間にゆっくりとまいう棒を奥に押し込まれた。
「む、ふぅっ……んんッ」
 突然やってきた口内に感じる圧迫感と息苦しさに黄瀬の瞳はうっすらと水の膜を張る。しかし周りは助ける事もせず寧ろ満足そうに笑っていた。
「涼太、それ噛んだらペナルティー」
「ふ、うぅ……っ」
 うまく飲み込めない唾液が口の隙間から溢れ顎を伝い落ちて行く。
「だらしのない格好ですね、黄瀬君」
 小さな滝のように道を作る唾液を黒子は舌で掬うように下から上へと舐め上げる。
 黄瀬が首に違和感を感じていたら赤司の指がそこに触れ、一瞬黄瀬が身を捩った。
「赤司君、邪魔しないでください。折角ボクに意識が向いているのに」
「俺は所有の証をつけただけだよ」
「何で青じゃねーんだよ」
「文句を言うのならば自分で用意すればいいだろう」
「赤い首輪も似合ってるからオレは別にいーし」
 真っ赤な首輪に同色のリードが繋がれ、その先は赤司の手中に収まっている。
「ふ、あっ、……んんぅ」
「おい黄瀬」
「ふ、ぁ?」
「口ん中の全部ふやけさせたら新しい棒突っ込むからな」
 ニヤリと口角を上げる青峰に黄瀬の瞳からも口からもポロポロと透明の液体が零れた。
 ぐいっと赤司がリードを引っ張った事により黄瀬の上体は前のめりになる。しかし自らの唾液でベトベトの顎を掴まれると強制的に上を向かされた。
 目の前には愉悦に満ちた赤い瞳がある。
「さて、今回のヤキ入れは《躾》だよ。涼太」
 赤司の声が施錠の音と共に耳の奥へと響いた――。 




【帝光時代のノルマとヤキ入れ(ペナルティー?)のお話。ノルマ達成出来ずヤキ入れと称して他キセキにあれこれされちゃう黄瀬くん】
妖しさを残しながらもほのぼのにするつもりだったのですがミスディレクションしました。寧ろログアウトしてます。何か暗転する勢いすらありますね。
黄瀬くんへのヤキ入れ内容を考えるのがきっと彼らの中では一番楽しいんだと思います。愛故に。

>お祝いのお言葉ありがとうございます!早いものでもう10万打です。
拙宅の黄瀬くんに萌えていただけて大変光栄です!ありがうございます!
日参とかっ!うわあああっもうっ嬉しいです!
修学旅行のキセキは黄瀬くん大好き過ぎます。拙宅の黄瀬くんはキセキに弱過ぎます。何だかんだでお互い大事だから相思相愛な気がします。ただ、気持ちがストレートに伝わらないから一方通行に思えますが。
ありがうございます。頑張ります!
リクエストありがとうございました。



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