青黄


 出会いは三年前。黄瀬の思慕が恋慕に変わったのを利用してばかりの日々に漸く終止符を打った。かく言う青峰は自身の恋慕に気付きもしなかった。それがあの様な過去を生んだ結果にもなっているのだが、この際それは隅に置いておく。何故ならば、今が幸せ真っ盛りであるからだ。
 付き合い始めて三ヶ月と少しが経った。二人は進級し新入生も入り後輩が出来て先輩になる。所謂「中弛みの二年」と呼ばれる学年になった。入学当初から弛んでいた青峰には今更感が否めない。
 W・Cが閉幕してややあって、海常に訪れた青峰から黄瀬は公開告白を受けて晴れて恋仲になったのだ。青峰がわざわざ出向いたのは、海常の連中に「黄瀬はオレのだ」と一括で分からせる為である。
 そんな二人は今、黄瀬の家でまったりお家デート中だ。
「足の調子、どうだ?」
「平気っスよ。早く青峰っちとバスケしたいからリハビリも頑張ってるっス」
 何年か前にハニカミ王子だなんて呼ばれて一時期話題になったスポーツマンがいたがそれの比じゃない可愛さがあると青峰は心底思った。今の笑顔は青峰だけが知る青峰だけのものだ。そう思うと力任せに抱きたくなるが今は我慢する。黄瀬の怪我が完治するまでは手を出さないと決めていた。
 勿論理由は、黄瀬が大事だからで黄瀬を大事にしたいからだ。
「でね、一年が……って、青峰っち?」
 聞いてる? と訪ねてくる黄瀬に青峰の心臓は大きく鳴った。
 それもそのはずである。ベッドに二人並んで座っていただけでも隣から仄かに良い匂いがしてきて理性と本能の鬩ぎ合いであるのだ。そこに上体をやや前傾させて不安げな面持ちで下から見上げてくる様は火に油を注ぐと同義である。
「青み」
「なぁ、黄瀬」
「ん?」
 青峰が漸く口を開いた事で不安な表情は一気に喜色に覆われる。たった一音しか発していないのに、青峰には効果は抜群だ。
 煩悩と言えばそうだが、健全な男の欲求としては正しいと思う。今、目の前に居る愛する人を抱き締めたいだとかキスしたいだとか体を重ねたいだとか。兎に角触れたい。そう思うのは仕方のない事だ。
(しゃーねーじゃん。どっかの坊さんも言ってただろ。人間だもんって)
 微妙に誤っているが今の彼にそんな事はどうでもいいのだ。大事なのは黄瀬に触れたい欲求をどう満たすか、である。
「黄瀬」
「はい?」
「好きだ」
「は、い、え? ……ぇえっ!?」
 言葉を理解した黄瀬は顔を真っ赤に染めて目を丸くする。しかしそれだけで終わればまだ良かったかもしれない。
 あろう事か彼は視線をうろうろと彷徨わせ、唇も結んだり開いたりを繰り返している。そして――。
「っ、!?」
 ちゅ。
 ふに、と柔らかい感触が唇に当たったかと思えば、直後に可愛らしいリップ音が耳朶を打った。しぱしぱ瞬きをして現状を理解している間にも眼前の黄瀬はふにゃぁ、と蕩けた笑みを浮かべている。
「オレも、大好きっス!」
 えへへー、と締まりの無い声を漏らす黄瀬の脳内には一切〈計算〉の文字は無い。だからこそ青峰は今日この日まで耐えに耐え抜いてきたのだ。寧ろ全て計算し尽くした上での行動であったならばどんなに良かっただろう。
 しかし最早臨界点は突破したも同然だ。此処まで良く耐えたとも思う。
 向こうから触れて来たのだからもう良いだろう。それが、青峰が導き出した答えである。
「黄瀬」
「なんスか?」
「愛してやる」
 幸せの音がキシ、と鳴った。



【付き合ってから黄瀬のことがますますかわいく見えて仕方がない若干デレの青峰と、天然な黄瀬の甘めの話。青→→←黄くらいで、裏でもノーマルでも構いません。】
あれ。何だか全然沿ってない感が否めないのですがあれ。すみません。誰峰ですみません。
年齢操作可でしたので、二年生になりました設定にしました。付き合い始めな二人は今から幸せになるのです。
青黄の結婚式はいつですか!!

>こんにちは。この度は企画に参加していただきありがとうございます。お祝いのお言葉にも感謝致します。
その様に仰有っていただけて大変嬉しいです。書きたい物を書きたいだけ書いているだけですので、自己満の産物で申し訳ないです。どんどんネタも無くなってきていますけども!(笑)
これからも拙宅と拙作を宜しくお願い致します。
リクエストありがとうございました。


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