赤黄


 キレイに色付く楓が秋風に吹かれて枝を揺らす。その様子を赤司と黄瀬は二人並んで縁側に腰を下ろしながら見ていた。
 ぴったりと寄り添い、触れた箇所から互いの体温が伝わる。黄瀬は赤司の左肩に頭をこてんと乗せながらさやさやと揺れる楓を見詰めていた。
「何か、久々のオフっスね」
「そうだな」
「赤司っちとこうして二人で過ごすのって二ヶ月振りくらいっスよ」
「もうそんなに経つのか」
 少し肌寒いが大して気にはならないようだ。
 クスリと黄瀬が笑う。
「そっスよ。バスケ部はなかなか休みが無いから」
「俺の所為?」
「帝光が強いせい、っスね」
 頭上で赤司が小さく笑った。それから二人でクスクス笑う。
「後、オレが弱いせい」
 黄瀬がぽつりと呟く。
 その声はどこか寂しげな雰囲気を纏っていた。
「全然まだみんなに追い付けなくて、隣にもまだ並べられなくて、自分にやきもきしてるんス」
「そうか」
「そうっス」
 静かにゆっくりと流れる時間が心地いい。赤司の温度を感じたくて瞼を下ろす。けれどもそれは直ぐに終わりを告げた。
「なぁ、黄瀬」
「んー?」
「楓は何色だと思う?」
「楓って紅葉っスよね?」
「ああ、今お前が見ていたものだ」
 そう言われて黄瀬は瞼の裏に今し方見ていた景色を映し出す。目に焼き付いた色はとても鮮やかな――
「赤」
 風に揺れ、隣の葉と小さく音を鳴らすのは紅葉と言う言葉通りに真っ赤に染まったキレイな葉。
「赤司っちみたいな、赤だったっス」
「そうか。黄瀬、目を開けてみろ」
 言われてゆっくりと瞼を上げる。そこには矢張り真っ先に視界に映り込む緋色があった。けれど。
「……うそ」
 黄瀬の目に映ったのは紅葉した楓と同じように黄葉した楓が鮮やかに色付き隣合っていた。
「見落としていただけだ。黄色は初めからずっと赤の隣に立っている」
「……」
 楓からゆっくりと視線を隣に向ければ、優しく笑む赤色が其処にあった。
「この先もずっと隣に居る」
「赤司っち……」
 頬に添えられた手に自らのそれを重ね、また、同時に互いの唇も重なった。
 庭では赤色の楓と黄色の楓が睦まじく枝を絡ませている。



【どちらかの自宅でまったりしてる甘】
テレビで富山の立山(だったと思うのですが曖昧です)についてVが流れた時、NAで「黄色の楓が〜」って赤色に続き見頃だと紹介されていたのを思い出しまして。ネタを使わせていただきました。
前半部分が何故か脚本寄りの書き方になってしまっていてどうしようかと。あれで柱と役名書いてト書きすれば脚本ですよね。でも脚本に過去形は無いのでそこは直さないといけませんが。ってなんで脚本書きの話をしているんでしょうね。いけないいけない。
リクエストありがとうございました。


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