森黄


 二人の事を良く知らない人は口を揃えて『美男美女でお似合い』と言う。
 二人の事を良く知っている人は口を揃えて『残念なイケメンと残念な美人どうしお似合いだが同時に不安』と言う。
 そんな二人は現在束の間の休息、とも呼べるべきオフを満喫していた。

「森山センパイの匂いがいっぱいで幸せっス!」

 部屋に入るなり開口一番に言った。それも本当に幸せそうな顔をするのだから悪い気はしない。しかし同時に理性をフル稼働しなければならなかった。

「涼ちゃんてば昼間から誘ってる?」
「ちっ、ちがッ……!」

 彼女の表情はふにゃんふにゃんと笑っていた物から瞬時に慌てふためく物へと変わる。それに恥ずかしさも加わり真っ赤に染まった。
 露出しているデコルテと比較すれば一目瞭然である。
 只でさえ色が白いのだ。これが目立たない筈が無い。

「ホント、涼ちゃんてば可愛いよね」
「えっ、な、なっ何……突然」
「突然じゃないよ。毎日思ってる」
「そ、それもネットに書いてたんスか?」
「やっぱりバレちゃう?」
「もぉーっ」

 ドキドキして損した! 何て言って気分は将に憤慨中と言った態度をとる割には、その表情は弛緩している。

「確かに相手を褒める、とは書いてあったけど毎日可愛いって思ってるのはオレの本心」
「うぅ……」
「可愛いだけじゃないけど」
「も、いいっスから……」

 これ以上はドキドキで死んでしまうらしい。
 黄瀬に言葉の続きを塞がれ残念がるもちっともその様には見えない。それは勿論口元が描く上弦がそうさせているのだ。

「まあ、何でもネットの内容を鵜呑みにする訳じゃないけど」
「そうなんスか?」
「当然」

 不敵な笑みを浮かべるや否や森山は黄瀬の腕を引くなりバランスを崩させそのままベッドの上へともつれ込んだ。

「もうっ、びっくりするじゃないスか森山センパ……っ」

 抗議の一つでもと思い覆い被さる森山を見た途端に唇が塞がれた。まるでさっきのお返しと言わんばかりに言葉を紡がせてはもらえない。
 次第に森山の唇が頬をなぞり、ベッドに倒れた事で露わになった耳へと辿り着く。

「オレは、キセリョに関しては絶対に本物しか信じない」
「……っ! それ、反則っス……」

 強張っていた身体から力がふにゃりと抜け、より深くベッドに沈む。
 いつの間にか指を絡ませ繋いでいた手をどちらともなくしっかりと握り返した。これは、只の合図にしか過ぎない。
 ネットに頼らずともお前のことならば知っていると、遠回しに言われた気がした。
 それが単純に嬉しくて、彼に身を委ねそっと瞼を下ろした。



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