青黄


コレと続いてたりなかったり)

「青峰っちー! 起きるっスよ!」
「ぐっ、ふッ」

 アラームが鳴る五分前に必ず睡眠妨害基、起こしにくるコイツ――黄瀬は、半年前にテツが道すがら見つけ情けをかけたばかりに体育館までついてきてしまったのをオレが引き取った。何かごちゃごちゃ言って泣き喚いていたが、一緒に朝晩のロードワークに行って一緒に飯食って一緒に風呂入って一緒に寝てやれば始終尻尾を振っている。疲れねーのかとも思うが疲れたら振るのを止めるだろうし疲れてねーんだろう。
 しかし最近、デカくなった気がする。否、デカくなった。出会った時は膝くらいにあった頭が今では臍の辺りにある。生きているんだし別に成長についてとやかく言うつもりはねぇ。親だって実子の成長よか黄瀬の成長を楽しみにしているくらいだ。ただ、その分問題が出てきた。
「っの馬鹿! 腹に飛び乗るなっつってんだろ! 重てーんだよ!」
「む。ちゃんとゆさゆさしたっス! それで青峰っちが起きないのが悪いっス」
「目覚まし鳴ったら目ェ覚ますっつの!」
「青峰っち腹筋の鍛え方が足りないんじゃないスかぁ?」
「っざけんな! 誰だって無防備な所に勢い良く飛び乗られたら苦しいっつの!」
「ぶーう」
「お前いつから豚になったんだよ」
 唇を尖らせて拗ねる頬を軽く抓ってやる。いたいっス、何て言うけれど力を入れて無い時は大抵満更でもない顔をする。
 そう、黄瀬の体重が増えた事により朝は少々寝覚めが悪い。しかしそれよりももっと厄介な問題があった。
「いつまで乗ってんだよ」
「青峰っちが起き上がるまでっス」
「起き上がるから退け。邪魔だ」
「そのまま腹筋使って起き上がればいいじゃないスか」
「その腹筋を重てー体で抑え込んでんのはどこの誰だよ」
「あ、そっか」
 そこまで言えば普通ならば退ける筈だがコイツの場合はそうもいかない。
 あろうことか腰を動かしながらズリズリと後退するのだ。そしてピタリと止まった場所に問題がある。
「いや退けよ」
「ここなら腹筋使えるっスよ!」
 どうやっても腹筋に拘るのか。しかし別段腹筋を使う事に問題は無い。問題なのは、黄瀬が跨っている位置だ。
 オレから見える景観は服さえ着てなきゃ絶景だろう。下腹部と股間の間くらいに跨る黄瀬を下から見上げるのは目の保養であって同時に毒だ。
 黄瀬はオスだが初めて会った時はてっきりメスかと思う程に可愛かった。今も可愛いっちゃ可愛いが成長したからか――と言っても未だあどけなさはあるのだが――男の子な一面が見えるようになった。
 それでも矢張り色白で、子どもらしい丸みは残ってはいるもののその肢体はスラリと美しく伸び、顔は整ったキレイなそれをしているのだ。正直、色々とヤバい。
 しかし何も分かっていない犬は「早く起きろ」と体を上下に揺する。「早く早く」と催促する様は艶やかさが見え隠れしていた。
 ってオレは何でこんなガキ相手に欲情しなくちゃなんねーんだよ。アホらしい。
「ったく。転げ落ちても知らねーぞ」
「平気っスよ! だって青峰っちがちゃんと支えてくれるんスもん!」
 お前の親は太陽かと言いたくなるくらいに良い笑顔だ。
 だがいつまでもこうしているわけにもいかない。そろそろ目覚ましも鳴るだろう。
 だから仕方無くオレは黄瀬を乗せたまま上体を起こした。案の定後ろに転げそうになる黄瀬の腕を引っ張ってやれば胸に倒れ込んでくる。後ろに行ったり前に行ったりと忙しい奴だ、なんて思いながら触り心地の良い頭を軽く撫でてやれば嬉しそうにしがみついてきた。
「おはよっス、青峰っち!」
「んーあー、はよ」
「お散歩行くっス!」
「言っとくけどお前の散歩はオレのロードワークの序でだからな?」
「ジャージに着替えるっス! 青峰っちも早く着替えてね!」
 そう言ってするん、とオレの腕の中から抜け出して部屋の隅にあるタンスから二人分のジャージを取り出して再びベッドに戻って来る。
 簡単に礼を言ってからオレはのろのろと着替え始めた。
 そしてまた新たな問題に気付く。
「だから何で全部脱ぐんだよ!」
「ぶっ!」
 半ば声を荒げながら先程脱いだばかりのTシャツをキレイな顔面目掛けて投げつけた。
 黄瀬は一遍に脱いでから着るので一糸纏わぬ調和のとれた婀娜な肢体が眼前に広がるのだから堪ったモノではない。
 だから、何でガキ相手に欲情してんだよ。
 後半年もすれば、こいつはとんでもない美人に成長するんだろうなと思ったら、身体の奥で何とも言えぬ疼きを感じた。



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