佐久源


 源田が居なくなった。夢だけど。
 源田が居なくなった夢を見た。
 だから無性に、聞きたくなった。お前の声。

『だからってこの時間は無いだろう』

 随分と眠たそうだな。って言うかまだ半分寝てるだろ。
 声がいつもより低いし、話すスピードはゆっくりだし、ちょっと舌っ足らずだし。お前絶対眠いだろ。

『分かってるならもう切るぞ?』

 ふざけるな。今切ったら後悔するだろ。
 俺が。

『ふっ、なんだそれ』

 あ、段々意識がはっきりしてきたな? 大分話すスピードも声のトーンも戻ってきた。

『お陰様で』

 でももう少し微睡んでいたって良かったのにな。お前の寝起きはエロいから目でも耳でも楽しめる。謂わばご馳走だ。

『切るぞ』

 だめ。切らせない。切ったら今日一日中学校でがっつくからな。ガンガン。

『で、怖い夢を見たから眠りたくないんだろう?』

 話を逸らすな。誰が怖いっつったよ。源田が居なくなった夢を見たってだけだろうが。自意識過剰か。

『俺は怖いよ』

 は?

『佐久間が居なくなったら怖い。夢でも怖い。現実に起こったらって考えると怖い。現実だったら、分からない。信じたくないから』

 ……バーカ。
 俺はお前を置いてどっかに行ったりしない。俺にはお前が必要で、お前には俺が必要。そうだろ。

『そうだな』

 なんだその気のない返事は。お前本当にそう思ってんのか?
 お前の愛を疑う。

『好きだよ、佐久間』

 な、はっ? バッカじゃねーの!

『佐久間が言ったんだろう? お前の愛を疑うって』

 だからって何で……っ!

『冗談でも何でも、佐久間に疑われると辛いから』

 お前さ。

『ん?』

 やっぱ今日一日中覚悟しとけよ。がっつくわ。

『え? あれ? 何でそう言う話になるんだ? 寝ぼけてる?』

 少なくともお前よか覚醒してる。覚悟しとけよ。

『じゃあ……』

 何だよもう切るつもりかよ。

『学校では我慢、してくれ。部活が終わったら、ちゃんと……付き合う、から』

 お前バカだろ。何で今そうやって煽るわけ? クッソ勃った。朝勃ち? まだ朝じゃねーし。なにこれ、暁勃ち? 曙勃ち?カーテン開けてねぇから良くわかんねー。

『もう切ろうか?』

 は、何で? バカじゃねぇの。お前も俺のを手伝うんだよ。

『は?』

 折角一日の始まりを好きな奴と共有してんだ。楽しまなくてどうするよ。
 なあ?



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