砂木源


 砂糖、塩、酢、醤油、味噌。
 料理をする上で必要不可欠な調味料だ。しかしそのストックを切らしていることに気付かないとはまだまだ未熟者の証拠だと思う。

「味付けを変えたのか?」
「う……。や、矢張り分かるか?」
「成る程」

 目の前に座る砂木沼はフッと笑うと、再びおかずに箸をつけた。

「お、美味しく……ない?」
「美味しく無かったら箸は進まないと思うが?」

 先程から繰り返し行われる質問に質問で答えるやり方は果たして正しい言葉のキャッチボールと呼べるのだろうか。
 それすらも気に留める事無く砂木沼は口に運ぶ。そしてある時、「美味しい」と口にするのだ。とても、心臓に悪い。

「明日、買いに行こうか」
「うん!」

 無くなると言うことは、それだけ共に居ると言うことだ。朝から晩まで食べてくれる人が居る。
 それだけで、色んなものが満たされる。安上がりだとは思わない。
 だって、そうして共に過ごした時間が何よりも高価なものだから。

 最高に幸せ。
 好きな人と生涯を。
 それから――



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