「寂しかった」


久し振り、と互いに言葉を交わしたのはつい先程の出来事だ。
数ヶ月振りの元チームメイトとの再会に胸がじんとした。

鬼道が雷門中に転校してから連絡は取っていたものの、なかなか直接会うと言うのは出来ずにいたのだ。

「調子はどうだ?」
「いつも通りだよ。只、今日は鬼道に会えるからかみんなのモチベーションは上がりっ放しだがな」

小さく源田が笑うと、鬼道もつられて笑う。
先程から鬼道に突進しそうな勢いの佐久間を数人掛かりで抑えていたのが視界に入ってきたのだ。

「源田、お前はどうだ?」
「何がだ?」
「さっきの質問だよ。お前の答え方は帝国全員の事だろう?源田自身のことじゃ無い」

帝国時代と変わらぬゴーグルから覗く赤い瞳を見つけると、源田は思わず言葉が詰まってしまった。
目が離せない。
それはまるで、蛇に睨まれた蛙だった。

「お、俺は……」

其処まで言い掛けて言葉を切る。
恥ずかしさ故にどうしても後一歩が踏み出せないのを鬼道は知っていた。
だからこそ、少し意地悪がしたくなり先程の質問をぶつけたのだ。

「俺、はっ……!」

腹を括ったことが源田の一生懸命な眼差しから伝わって来た。
その言葉の先を鬼道は期待していたのだが、それは再び源田の口の中に収められてしまう。
原因は源田の羞恥心によるものでは無かった。
明らかに第三者によるものだ。

「……佐久間」
「鬼道っ!源田なんかとばっか喋ってないでこっちにも視線をくれっ!」
「すまん、鬼道。もう無理だった」
「すみません、鬼道さん」
「こ、これでも頑張って佐久間先輩を足止めしたんですよ!?」

佐久間の介入により、機会を逃してしまったのだ。
佐久間の後を追い掛けて来た寺門、辺見、成神は申し訳無さげに鬼道に頭を下げる。

「後でそっちにも行こうと思っていたんだが」
「遅いぞ鬼道!どれだけお前を待っていたことか…っ!」
「じゃあ、向こうに行くか」

相変わらずの佐久間に鬼道が苦笑しながら促すと、佐久間は語尾に音符が付いているのではないかと思わせるくらいの返事で指定された場所へと向かって行った。

「じ、じゃあ…俺は円堂達にも挨拶してく」
「源田」

鬼道の横を通り過ぎようとした刹那、名前を呼ばれ振り返ると、一瞬だけ唇に柔らかいものが触れた。

「き、どう…?」
「答えの続きは試合の後だ」

不敵な笑みを浮かべて青いマントを翻しながら鬼道はその場を後にした。

「聞かなくても分かってるくせに…」

触れた唇をそっと指でなぞると、其処だけ熱を持っているかのように熱く感じられた。
キュッと唇を噛み締める。
源田は鬼道と反対方向にある雷門側のベンチへと足を向けて歩き出した。
どきどきと五月蝿い心臓を落ち着かせる為にゆっくりと深呼吸をしながら。







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