進路は永久就職


「書き直し」

目の前の人物に突き出した一枚の紙を突き返された。南雲はその紙を渋い顔で受け取る。

「何で!」
「敬語」
「ですか!」
「…ハァ」

溜め息を吐きながら頭を抱える若い男は机の脇に纏めて置いてある紙の束を南雲に見せ付けるようにもう片方の手で叩いた。

「お前だけだぞ?みんなちゃんと考えてるんだ。期限から三日も猶予を与えてやったのに」
「そんなのわっかんねーもん」
「今日中だ。それを提出するまでは帰れないと思え」

話が終わると南雲はその部屋を後にする。扉を閉めた後、視線を上部に動かした。視界に入ってきたのは「職員室」と書かれた黒い文字。無性に苛ついたので職員室のドアを自慢の足で蹴ってやった。

自分の教室に戻ると南雲は直ぐそこにあった誰かの席に倒れ込むように座る。

「晴矢。其処は私の席だ」
「うっせー知るかそんなもん」
「お前、まだ出して無かったのか」

南雲が手に握っていた「進路希望調査書」と書かれた紙を涼野が奪う。それは職員室から教室までの短い時間の間に至る所に皺が刻まれてしまっていた。

無記入のそれは南雲晴矢の名前しか書かれておらず、涼野は分かっていたのか特に反応は示さない。

「だあってー…」

漸く上げた頭だったが、その顔に貼り付けているのは情け無いと言う表現が一番しっくりくる表情だった。

何も思い付かないんだ!と吐き捨てるように言いながら座り直す。涼野はそれを見ながら席を退かない南雲に諦めたのか、机に座った。

「だったら」

机の端に手を付き体重を支えると上体を倒して南雲との距離を縮める。一気に縮まった距離に自然と南雲の顔が紅潮した。

「私の嫁になれ」

時間差で南雲の顔が遅れて更に赤味をます。脳が言葉の意味を理解してしまったらしい。

「はあああっ??!」

南雲と涼野しかいない広い教室に響き渡った声は裏返っていた。



その後、もう一度職員室に行った南雲は矢張りもう一度紙を突き返されたようだ。




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