7月7日
「みんな!願い事書こうぜ!」
事の始まりはこの円堂の一言だった。
今日も無事に部活を終わらせ後は帰るだけだと言う所で円堂が放った言葉は一瞬だけ空気を静めた。
「商店街ででっけぇ笹が用意されててさ!な、行こうぜ!」
この半ば強引な円堂の誘いに乗ったのは矢張りと言うべきか、綱海だった。そしてそれに続くように1年、マネージャー(当然春奈もだ)、それから吹雪に風丸に何故か宮坂までもが賛成した。宮坂、何故お前が居る、と言ってやりたかったが此処は何も言わない方がセオリーだ。
結局全員で行く事になったのだが、商店街まで歩いている道中、俺はふと帝国で過ごしたこの日を思い出していた。あの時もこうして皆で帰っていて、一番後ろを歩いていたのが俺と源田。だから七夕の話をしてやったんだ。今年も皆で帰っているのだろうか。懐かしくて暖かい。
目的地に着いたのか、前を歩いていた壁山の背中にぶつかってしまった。各々が短冊を貰い、思いの丈を書いていく。
「円堂さんは、何て書いたんですか?」
「ん?豪炎寺が従順になりますようにって!」
「……は?」
「あっははは!冗談だって!世界の頂点っ!これしかねぇだろっ」
円堂は笑っていたが豪炎寺の顔が些か引きつっている。そんな豪炎寺の願い事など見ずともわかるのだが。高確率で妹のことに違いない。
豪炎寺の隣で一生懸命書く虎丸の短冊がちらりと見えてしまった。「豪炎」の文字をこの目が捉えた時、気付かれないようにゴーグルの奥から憐れみの念を送る。
吹雪は向こう側のテーブルで、短冊を握り締めたまま染岡の周りをうろちょろしている。これは只染岡に懐いているだけなのか、はたまた無言の威圧感を漂わせているのか俺の場所からは断定出来ない。
十人十色と言うだけあって、皆の願いもバラバラだ。
俺は何を願おうか。
俺の短冊と同じような濃紺の星空を見上げてぼんやり浮かぶのは――。
Raimon.07/07