七夕


やっぱり、一緒がいいよなあ…

部活の帰り道、校門に向かって歩いていたからまだ帝国の敷地内に俺たちは居た。そこで七夕の話になり、ぽつりと先程の言葉を源田が口にしたのは3歩前だ。

「織り姫と彦星のことか?」

辺見が星を語るのが何だか可笑しくてつい吹き出しそうになった。(実際手遅れだったが)

「織女と牽牛は夫婦なのに年に一度しか会えないんだ。俺だったら、嫌だなって」
「え、恋人じゃないんですか?」
「夫婦だよ」

な、佐久間って俺に振るなよ。可愛いから。夜道襲いたくなるから。

そんな俺の本心を上手に隠しつつ「ああそうだな」なんて適当に答える。何故か源田の左隣をキープしてる成神が源田を質問攻めにしていたもんだから俺の苛々は積もるばかりだ。源田も源田で人がいいと言うか、ご丁寧に説明してやる。苛々はしたもののあいつが楽しそうだから今回だけは見逃してやろうかなと少しだけ頭の隅で考えた。

「元々どちらも働き者だったんだけど、夫婦になってから牽牛は農業、織女は機織りの仕事をやらなくなったんだ。それを見かねた天帝が、2人を働かせるように川で別れさせた。でも悲しみのあまり益々働かなくなったから年に一度だけ、カササギの橋の上で逢瀬できるようにしたんだ」

良くまあ知ってるよな。俺の持ってる七夕の知識と言えば、織り姫と彦星が年に一度天の川で会えるってくらいだ。

まだ暗くなり始めた空にはちらほらと数えきれるくらいの数しか星は出ていない。こんな数で本当に会えるんだろうかと柄にもなく考えてしまった。まあ、俺にとっては2人には悪いがどっちだっていい。

「俺とお前が毎日会えて一緒に居られりゃそれでいーじゃん」

柄にも無いことを考えていたから、柄にも無くキザっぽく源田の右手の甲に唇を落としたんだと思う。偶には星の下で、何て言うのもなかなかいいもんだ。ただ、この場にそぐわないのは天に響く後輩の叫声だけだった。

「よーっし、今から稲妻町の商店街行こうぜっ!」

仕方がないから祈ってやるよ。無事に会えるように。だから、ちゃんと俺の願いも叶えろよ?



Teikoku.07/07



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -