育つおもい
最近はワイヤーがあって助かる、と言う話を休み時間に小鳥遊達としてたらセクハラにあった。と言う話を不動にしたらまたセクハラされた。
「な、なにを…っ」
自分で近付いていったが不動と距離を取る。触られた(と言うよりも掴まれた)胸を両手で隠しながら。しかし不動は眉間に皺を寄せるでもなくただじっと私を見つめていた。
「貧乳共にしたらワイヤーが入ってようがいまいが同じだろ」
腰に手を当てて鼻で笑われた。そんな事も分からないのかと言われているようだった。
「そ、そんなこと…っ」
「ワイヤーで胸の形をキレイに見せたって、乳が無きゃワイヤー何て必要性感じないだろ。ま、そんだけのモンを持ってるお前には関係ないか」
「別に好きでこんなになったんじゃ…」
隠す腕に力を込めると胸が押し上げられた。これでは強調しているだけではないか。
「ふ、不動が、不動がいっぱい触るから…」
「俺のせい?」
「不動が…ふどっ、不動に触られると、気持ち良くて…拒めない、んだ」
デクレッシェンドでもついていたかのように、最後の方は声が小さくなった。きっと今の顔は茹でた鮹のようになっているに違いない。何も言わない不動が気になってチラリと視線だけを向けた。視界に入ってきた不動は口元を手で覆っている。視線、と言うか顔ごと逸らされていた。胸の奥がチクリと痛んだ気がする。しかしそんな痛みも直ぐに消えた。不動の顔が赤いような気がしたからだ。逆光だったけれど、耳が赤くなっているのははっきりと見えた。
「…不動?」
名前を呼べば目だけを動かす。視界の端に入るくらいだろうか。そう思うと少し寂しい。
「お前、それ反則だろ」
「え?」
反則なのは一体どちらだ。不動の表情は逆光でよく見えないのに、不動からは私の顔がはっきりと見えるのだから。だから、おあいこだと思う。
不動が触れる度に、私の気持ちも一緒に育っているんだと言ったらきっとまた小鳥遊辺りにセクハラされるのだろう。