待ち時間


待ちくたびれた、と言うほど時間は経っちゃいない。が、今来た所〜と言えない程待ってはいる。つまり、微妙。腕時計が狂ってんのかと思って携帯で確認してみても腕時計が2分早いだけだ。電話してやろうかとも思ったが、短気な奴だと思われたくなくて開いた電話帳を閉じた。

「…チッ」

正直らしくないと思う。昔の自分ならば時間通りには来なかった。ましてや時間前に来ることなど有り得なかった。落ち着き無く無駄に携帯を開閉する。新着問い合わせもこれで何度目だろうか。初めの方は期待していた。しかし二桁を越えるともう只の手持ち無沙汰を誤魔化す一連の流れに過ぎない。

待ち受けに戻して携帯も閉じる。そしてそれをポケットに入れようとした時、漸く震え出した。

「もしも…」
『すまない不動っ!』

待ちに待っていた相手の声に思わずにやける。しかし泣きそうな声で言うものだから直ぐに引き締まった。待ち合わせを公園にしなきゃ良かったと今更後悔しても後の祭りだ。休日とあって子どもの声が五月蝿い。電話に集中したいのにそれが出来ない。

「落ち着けよ源田」
『待ち合わせ時間はとっくに過ぎているのに…』
「言い訳聞いてやるから。今どこだよ」
『駅の改札を抜けたとこ。あの、人身事故があって暫く電車が動かなかったんだ』

何度も何度も謝罪の言葉を口にするものだから、思わず大きな溜め息が出た。それを俺が怒っていると勘違いしたらしい。「直ぐに行く」と言って一方的に通話を終了しやがった。寧ろ俺はそのことに苛ついた。しかしきっとそれもあいつの顔を見たらどうでも良くなるのだろう。

「もう待てねー」

彼がやって来るであろう方向へと歩き出す。こっちの方が早く会えるなんて考え方は、本当に俺らしくないと思う。源田に感化されるんなら別にいいかと思う自分は思っていた以上に、相当あいつの事が好きらしい。





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