正直朝から青峰と顔を合わせ辛かった。けれども学校に着くまでがお泊まりだ。まるで家に帰るまでが遠足だと初等教諭が言うような言葉だと思うが実際その通りなのだから仕方がない。
そもそも青峰を泊めたのは俺の意志だ。それは否定しない。けれどもまさかソープ紛いの事をやらされるとは思わなかった。
だから今日は一段と意気込みも違う。違う、違った。なのに、俺は再び貞操の危機に瀕している。何故だ!
「あの……紫っちぃ?」
「うん」
「何してんスか〜?」
「うん」
「いや、『うん』じゃなくって!」
「うん」
「……どいてくんないスか?」
「ヤダ」
(何でそこだけちゃんと答えるんスかああああ!)
もう一度言う。現在俺は貞操の危機に瀕している。
事の発端はほんの数分前に遡る。
メンドイと言いながらもちゃんと部活後の買い出しについて来てくれるし荷物も持ってくれるので俺は上機嫌だった。そのテンションのまま夕飯の生姜焼きを作り、二人で食卓を囲う。
漬け込み時間が短かったかもしれないと思っていたが紫原が「美味しい」と言ってくれたので気分は上々だ。
そして紫原を先にお風呂に入れた。その間俺は洗い物を済ませる。
因みに今日の朝食で余った分と新たに炊いた分と合わせて六合あったのだが紫原がペロリと平らげてしまった。青峰も凄かったが紫原は何もかも規格外のようだ。
それが終わった頃、丁度紫原が上がったので俺が脱衣所に向かう。しかしこの時俺の考えが甘かった。
エロ峰の称号を持つ青峰と違ってあの物臭な紫原だからと勝手に結論付けて勝手に安心していたのだ。この時の俺を殴りたい。まさしく後悔先に立たずだ。その言葉が今は身に沁みる。
「黄瀬ちーん。そこに大判エビセン忘れたー」
「へっ?」
鍵を掛けると言う行為を怠った結果、上半身裸で半ケツ――丁度ショーツを脱ぐ所だった――状態を見られてしまった。
突然の出来事に思考も身体もフリーズする。
「黄瀬ち」
「ひぃやああああああッ!!」
この時どうして風呂場に逃げ込まなかったのだろう。幾ら気が動転していたとは言え、自ら逃げ場をなくすなど軽率過ぎた。
俺は腕で胸を隠しながら部屋の一番奥の壁まで後退った。その際前屈みで動いたので最後の最後でお尻から転けると言う間抜けなオプションを付けてしまったが。
骨盤から五センチ程下げたままのショーツが仇となった。
「でっでてっで、て、でっ」
「ねぇ黄瀬ちん」
恥ずかしさで顔も体も熱い。更に満足に言葉も紡げない。
紫原が洗濯機の上に置いていた大判エビセンをスルーしながら俺との距離を詰めてくることに益々頭が回らなかった。とうとう目の前でしゃがむと両手首を掴まれる。あっと言う間に胸を覆うものが無くなってしまった。
「あ……や、やだ……っ」
「うん。思った通り」
何が思った通りなのかと思っていたら耳に聞こえた呟きに目を見張る。
――“美味しそう”
そして今に至る。
ひたすら胸をかぷり、と噛まれているのだ。時折乳首をじゅるる、と音を立てて吸われたり甘噛みされたりする。
恥ずかしくて今すぐに止めて欲しい。そう思っているのに口からは情け無い声しか出なかった。
押し寄せる快感を逃そうと頭を振る。けれども半分はこの刺激が気持ち良いと思っている自分と股の奥がジンジンと疼いている事実を必死に否定したかっただけなのかもしれない。
「んっ、やんッ、ぁ、ぁッ」
「ふわふわだし」
「むらっさ、ぁあッ、きぃっん……ちぃ」
拘束されていた手首はとっくの昔に解放されている。しかし快感の海に溺れ拒む事を忘れてしまったのかただただまだ湿ったままの紫原の髪に指を絡める。
紫原の手は胸に這わせるなりぐにぐにと思うままに形を変えていく。それだけでも甘い刺激が襲うのに、気儘に乳首を攻められれば腰が立たなくなりそうだった。
「もう……む、りぃっ、ふッぅ、アンッ」
「黄瀬ちんが妊娠したらもっと美味しくなるよねー?」
彼の言葉にサーッと血の気が引いていく。
まさか。そんな。ウソでしょ? 本気じゃないでしょ?
色んな感情の入り混じった言葉は声にはならず、瞳と早鐘のような心臓だけがそれを訴える。
「やめて……ッ、ほんと、それだけは……や、やだっ」
昨日青峰の瞳の奥でも見た獣じみた光に俺の体はカタカタ震える。身体はこんなにも火照っているのに変な感じだ。
太腿に当たる張り詰めた紫っちのソレは、布越しですらそれが如何程の大きさであるかが伝わってくる。
「ね、黄瀬ちん」
「ひっ、う、や、だ……だめっス」
「だめ?」
「うぅっ……む、り」
「黄瀬ちん」
滅多に聞けない紫原の低い声が耳元でした刹那、俺の中で陥落する音が聞こえた。
結果から言えば、何とか処女喪失は免れた。けれども結局、規格外――勃起するとそれ以上なので流石に咥えることは出来なかった――の男根を唾液でベトベトになった胸で抜く事になってしまった。二日連続でまさかこんなことになるなんて思いもしない。
紫原が漸く出て行って、明日こそは! なんて一人意気込んでいた。けれど脱ぎかけのショーツに手をかけた時、ソレも座っていた床も太腿を伝う液体で濡れていたと気付いて打ち拉がれることになる。
許すかっ!
(良く考えたら生だしっ!)
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