坂田家のお正月(3) | ナノ

:: 坂田家のお正月-3

ーー銀時の場合ーー

「やっぱ元旦だから人出がすげーな」
「ですね」

近所とはいえ、それなりに規模もあり名も通ったその神社は初詣に来た人でごった返していた。

「なぁ、俺おみくじやってきていい?」
「俺は破魔矢買いに行くか。銀時、ちょっと金時とそこで待っててくんね?」
「そうですね。でもここだと人がすごいので境内を下りたところで待ってます。そこで集合しましょう。じゃあ金時、銀にぃと行きますよー。迷子になると困るから抱っこしましょう」
「うん!!」

お守りや破魔矢を買う人、おみくじをひく人で混雑している社務所の方に向かう銀八と白夜。銀時はその反対方向に金時を抱えて歩く。

ーーそして、20分後。

「ちょ、銀にぃなんだよそれ…」
「銀時おま、白のこと言えねーぞ……」

わた飴の袋を2つ下げ、その両手にりんご飴やらチョコバナナの乗った発泡スチロールのトレイを持つ銀時に、銀八と白夜は開いた口が塞がらない。当の金時はニット帽の上にアンパンマンのお面を着け、ご機嫌でわた飴にかぶりついていた。

「美味しそうだったし、強請られてつい……」
「「………(だからってこの量はありえねぇだろ!!)」」

だけど、銀時がこうやって少し困りつつも嬉しさを滲ませた表情を見せるのは、金時に何かせがまれたりねだられたりした時だけだということを銀八と白夜はわかっていたから、二人はもう何も言えなかった。自分達だって、金時が可愛くて仕方がないのだ。

そして四兄弟は、家路につく。先ほどまで銀八に背負われてはしゃぎながらチョコバナナを食べていた金時は、今は静かに寝息を立てていた。

「金時、寝ちまったか?」
「うん。すっげー幸せそうな顔してらぁ。しかも、口の周りチョコ付けたまんまだぞコイツ」
「えっマジで?コートについちゃってる感じ??」
「いや、大丈夫です。ちょっとだけなんで」
「ちょっとだけってどっち?口に?コートに??」
「残念ながら後者、ですかね…」
「ちょぉおおおお!まじでか!!こないだ買ったばっかなんだぞコレ」
「八にぃ、しーっ!金時が起きちまうだろーが」
「………ごめん」

「それにしても、可愛いな」
「ですね。天使みたいだ」
「おい銀時。疲れたから代わって」
「はいはい。(…自分も寝顔見たいって素直に言えばいいのに。まぁこういうところが可愛いんだけど)」
「ふぅー、ちょっと前まで赤ん坊だと思ってたけど重くなったわー。肩痛ぇ」
「だよなー。成長って早ぇな」
「うん。本当に大きくなりましたね」

「よし、じゃあ帰ったら夕飯の準備すっか。お前ら何食いてーの?」
「「すき焼き!!」」
「お前らはほんっと食の好みだけは合ってんのな。まぁそう言われるだろうと思って昨日いい肉買っといたから」
「よっしゃぁあああ!!」
「銀八のすき焼きも世界一ですからね」
「ノロケてんじゃねーよって言いたいとこだけど、確かに八にぃの飯は何でも美味い」
「褒めても何も出てこねーぞ。今日はおめーらで片付けな」
「「えっ……」」

沈みかける夕陽を背にして歩く帰り道。
3人と1人の影が、だんだんと伸びていく。
そんな、坂田家四兄弟の元旦。酷く幸せな、お正月。

2012/01/02

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