坂田家のお正月(2) | ナノ

:: 坂田家のお正月-2

ーー白夜の場合ーー

「さて、腹もいっぱいになったし、テレビはつまんねーし。金時、白にぃとお散歩行くか?」
「うん、おしゃんぽ!」
「いいけど片付け終わったら初詣行くから、すぐ帰ってこいよー」
「気をつけていってきてくださいね」
「オメーらこそ俺らがいない間に新年一発目とかやってんじゃねーぞ」
「あっ、それは大丈夫です。姫始めは夜のお楽しみにとっとくん…ぐぼぁっ」

銀時の鳩尾に高速で拳をめり込ませた銀八は、何事もなかったかのようにせっせと金時にお出かけ用のコートを着せ、最後に最近買ってあげた耳当てとポンポン付きのニット帽をかぶせた。

「はい、お出かけ準備完了ぅー」
「「いってきまーす!」」
「いってらっしゃい。気をつけてな」
「………………………」

未だうずくまったままの銀時だったが、これは坂田家のよくある風景。気にせず放置して、白夜と金時は家を後にした。

「もーいーくつねーるとぉー、おしょぉーがーちゅー」
「ぶっ!もうお正月来たけどな。それ保育園で習ったのか?」
「うん、そだよ!!」

昼下がりの静かな住宅街を二人で手を繋ぎ歩く。さすがに気温は低いものの、よく晴れて空気は澄んでいてとても気持ちのいい元旦だった。ふと白夜が隣を見遣ると金時のかぶるニット帽のてっぺんに付いたポンポンがふわふわと揺れていて、その愛くるしさに思わず頬が緩んでしまう。目的地のコンビニまでは、あと少しだ。

「よし、到着!なぁ金時、この中で1個だけ好きなの買ってもいいぞー。白にぃからのお年玉だ」
「わぁーーーい!おとしらまぁあああ!!」
「おいコラ走るなっつの。転ぶし迷惑だからっ」

金時がまっしぐらに向かったのは甘いお菓子ゾーン。元旦ということもあって店にはほとんど客がいなかったので、早速しゃがんでお菓子を選び始めた金時を横目に白夜はカゴを手にスイーツの棚へと向かう。

(八にぃと銀にぃにはシュークリームでいっか。つか、全員分買っときゃいいな。あ、それとアイスアイス…。コタツで食うアイスって何であんなに美味いんだろ)

お年玉も入って懐も暖かいので、いつもより豪勢にそのカゴが甘味で埋まっていく。一通り選び終わった後で金時の元に戻ってみると、最後に見た時と同じ姿勢でお菓子を食い入るように見つめていた。

「…ぅう……どしよ…」
「悩みすぎだろ…。どう、決まった?」
「…ぅ…これにする。あ、やっぱこっちぃ!」

金時に差し出されたのはイチゴミルク味の棒付きキャンディー。

「よし、じゃあカゴの中に入れて?」
「あい!」
「お金払ってお家に帰るぞー」
「あーい!!」

レジに並ぶと自分達の前にいたお客があんまんや肉まんを注文していて少し待たされる。店員がトングを手に保温機からいくつかそれらを取り出し、袋につめていく様をこれまたじぃーっと見ていた金時は、白夜の袖をくいくいっと引っ張った。

「しろにぃ、あれ。きんもたべたい…」
「あれって、あんまんか?」
「うん!!」
「しょうがねーなー…。じゃあ俺と半分こな?八にぃと銀にぃには内緒だぞ?」
「ないしょ?」
「しぃーってこと」
「うん!しぃー、ね!!」

唇の前で人差し指を立てた自分の真似をして金時もにこっと笑って同じ仕草をするから、白夜もニシシと笑い返した。秘密を共有するのはいつだってどこか後ろめたくて、いつだってどこか心躍るものなのだ。
それから会計を済ませコンビニから出ても、目を輝かせて白夜をずーっと見上げる金時。その様子に白夜は仕方ないか、と一旦立ち止まってあんまんを一口大にちぎり、何度か息を吹き掛け冷ましてから金時に渡してやる。

「ほらよ。まだちょっと熱いから気をつけろよー」
「わぁ、おいしーよこれ!しろにぃありがと!!」

もぐもぐとあんまんを頬張りながら、外の寒さに少しだけ鼻を赤くした金時が、ぱぁっと顔を綻ばせてくれて。それを見た白夜の心は奥の方からじんわりと温まっていって。二人はまた手をぎゅうっと強く繋ぎながら、家路についた。

「「ただいまー」」
「「おかえりー」」

家に帰ると、銀八とようやく復活したと思われる銀時が玄関までお出迎え。

「どこまで行ってきたんですか?」
「あ、ちょっとそこのコンビニまで、な」
「買い食いさせてねぇだろーな」
「えっ、あ…あぁ……」

うろたえる白夜ともの言いたげな目で彼を見つめる銀八、銀時コンビ。その様子を黙って見ていた金時が、突如会話に割って入った。

「しぃーだもんね、しろにぃ!」

得意げな顔で唇の前に人差し指を立てるその姿に一瞬ポカーンとする兄三人だったが。

「ちょ、金時おまっ」
「白てめー嘘吐くんじゃねーよ。それに金時の口の端っこ、あんこの粒付いてんぞ」
「ぶっ、…ほんとですね」
「これで夕飯食えなくなったらどーすんだよ」
「白、甘やかしすぎは金時の為にもなりませんからね」
「ごめ、つい……」
「金時、あんまりお菓子食べてばっかりだとご飯食べられなくなっちゃうからな?わかった??」

銀八がすっと屈んで目線を金時に合わせ、両手を掴んで言い聞かせると。

「あーい!!」

聞こえてきた元気の良い返事に、白夜は苦笑いするしかなかった。

「よし、じゃあ初詣行くぞー」
「「おー!」」

それでも。
銀八の言葉に二人声を合わせて返事をした後で白夜と金時は顔を見合わせ、まるで鏡のように唇の前に人差し指を立てる。それから一緒に小さく「しぃー」と呟き、笑いあった。

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