―シガンシナ区に住んでいた俺は幼馴染みであるエレン、ミカサ、アルミンと共に476年、訓練兵に志願した。


訓練兵団に入団して早1ヶ月。入団当初は、ハードな生活に慣れることができるのか不安に思っていたが、今ではそつなく全てこなすことができていた。


そして俺は只今食料庫前。理由は単純で料理当番が回ってきたからだ。

「う、重い…」

大量の芋が入った箱を運ぶ。いくら俺が男でも流石に訓練兵全員の夕飯の材料を1人で持つことなんてできる訳がない。それにしても今日の当番の奴等はどこへ行ってしまったのか、まだ1人も来ていないなんて。集団で遅刻はやめてくれと思う。

ため息もつきたくなる状況に訓練でくたくたな体がより重くなった気がした。


「…よっ」

このまま夕飯に間に合わないなんてことはみんなに迷惑がかかるので仕方なく、地面に降ろしていた箱を再び両手を使って持ち上げた。


ずっしりとした重みで体がふらふらとよたってしまう。まだまだ調理場まで遠い道のりであることに嫌気がさした。

「大体なんで食料庫と調理場が隣接されてないんだよ。」

苛々してついつい文句を言ってしまう。



ふと、曲がり角から見知った顔がこっちに向かってきた。
どんぐり頭の馬面。そう来たら考えられる人物なんて1人だろう。

貶したような言い方をしてしまったが、ようするにジャンだ。エレンの味方である俺のジャンへの印象は一言でいうと最悪。エレンと喧嘩し始めたときはおいおいなんて呆れたが、エレンより奴は遥かにガキだ。


こっちくんな、話しかけるな。

明らかにこっちへ向かってくるジャンに念を込める。

「お、怜大丈夫かよ。」

そんな願いも虚しく話しかけられてしまった。
言葉だけを聞くと俺を気遣ってくれている優しさが溢れているようにも感じるが今のジャンはニヤニヤと悪人面をしていて、はっきりいって優しいなんていう言葉とはほど遠いだろう。わざとらしい言い方しやがって。

「うるせえ、大丈夫だよ。」
妙に冷めた言い方をしてしまったがこのぐらいが丁度いいのではないかと思う。
スッと横を通っても何も言われることもなかったので、そのまま足早にその場を去ろうとした。

が、余りにもジャンに意識がいっていたのか足元の石につまづく。

「…うわっ」

手から持っていた箱が落ちていく。拾うの大変だろうな、とか後ろのジャンに転けるの見られるなんて、とか何故か客観的に自分を見ていた。

あーやべ、地面痛そう。
小石がたくさん転がっている地面に顔からダイブなんてほんとに今日は当番といいジャンといい厄日だ。


―ぐいっ

諦めて瞼を閉じたとき、後ろから腰を引き寄せられた。

俺は咄嗟に自分を抱えている人物を見た。

「じ、ジャン…?」

「あっぶねぇ、お前受け身ぐらいとれよ。怪我するぞ。」

触れるんじゃないかってぐらい近い顔。普段の俺なら確実にキモいと言って突っぱねただろうが今日は違った。
頬が熱くなって、胸がむずむずする。

なんで俺はジャン相手に照れてるんだよ、意味わかんねえしっかりしろ。

きっと初めてカッコいいと思えるジャンを見たからだ。いつもエレン越しにしか見てなくて、何処かでジャンは最低なやつ、と線引きしていた。それが俺の中で上書きされたような気がした。

「わ、悪い…その、ありがとよ…」

未だ赤い顔を見られまいと全力でジャンから顔を背けて慣れないながらも礼を言った。
なんでこんなに乙女のようにドキドキしてるのか。相手は男でしかもジャンだ。わけがわからなかった。こんなこと、女相手にもなったことがなくって収まることをしらない熱にどう対処すればいいかなんてわかるはずなかった。



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過去に書いた男主夢です。
20140114

 

 

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