一時休戦を伝えるヴォルデモートの声がホグワーツに鳴り響いて、私は一つ息をついた。手が震える、さっきまで私はデスイーター相手に死の魔法をかけて、戦っていた。
落ち着いてなんていられない。すごく、すごく嫌な予感がして、私は崩れかけた階段を必死に駆け下りた。階段の冷たい、石の音が私を余計に不安にさせる。大広間の扉を開ければ人、人人。怪我の治療を受けている人も入れば、戦いに倒れ、そっと横にさせられている人もいた。痛ましいその光景に思わず眉を顰める。どうしよう、フレッドは無事だろうか。なんでこんなにも嫌な予感がするんだろう。大広間を見渡しながら人々見て回る、そこに赤い髪の集団がいて、一目でウィーズリー家だとわかった。モリーさんが私の方をみて、涙を流し、悲しそうな表情をした。それに釣られて泣いてるみんなも私をみて、そして、その中にジョージはいるのにフレッドは居なくて。みんなの足元に目が行く。赤い毛が見えて、思わず足が動き出した。駆け寄って、膝をついて、顔を覗き込む。

「ふ、れっど…?」
横になっているフレッドの手を触ったら微かな温もりを残した彼の体はもう既に冷たくなり始めていて、私は頭がいっぱいになった。

「ねえ、まって、ジョージ、なんでフレッドが、ねえ、なんで」
隣で立っていたジョージの足にしがみついて茫然と問い詰めれば上から何滴もの水滴が落ちてきて、私の頬を濡らした。顔を見ればジョージは大粒の涙を零して泣いている。ようやく、私も全てを理解して、それでも混乱している頭で静かに泣いた。

私はフレッドに伝え忘れてしまった。フレッドは私のことが好きで、でもそんなフレッドのことが何故だか信じられなくて、返事は全てが終わってから必ずするとそう言っていたのは半年前だったか。

「ねえ、私、言い忘れたの、ねえフレッド」
彼の体に歩み寄って胸元に耳を当てて泣いても彼の鼓動は、彼の熱は伝わってこない。

「私も好きよ。フレッド、好きなの、ずっと好きだった、貴方がアンジーをダンスに誘った時は辛かったし、私のことを好きだと言ってくれた時は嬉しかった…!」

神様は何て、残酷なんだろう。なんで神様はフレッドを選んだんだろう。なんで、なんで

「ねえ、いつもみたいに悪戯だって言ってよ、こんなの、嘘だって、お願いよ…」

とうとう我慢できなくなって私は嗚咽を漏らして泣いた。

「怜…」
後ろからジョージの声がした。隣にしゃがんだジョージが私の肩を抱きしめて一緒に泣いてくれた。

「あいつ、馬鹿だよな、怜の気持ちには全く気付かないで6年間過ごしてさ…そんでもってようやく幸せになれるってときにっ、1人で勝手にさぁ!みんなをこんなに泣かせといて、相棒に一言も無くさよならなんてそりゃないぜ、兄弟…」

震えた、嗚咽交じりのジョージの声だけが私たちの周りに響き渡った。私だけじゃなく、みんな悲しんでる。悪戯は楽しませる為にあるんでしょう?こんな気持ちにしないでよ、なんて。

君にはきっと届いていない。


20160608



 

 

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