これの続き


上鳴電気とのあの一件があってから、2日経った。念願の蒸しパンを食べて以来購買には蒸しパンが置かれているようになった。
私の手には今日買った蒸しパン。そして食堂で友人とご飯を食べている上鳴電気の手にも蒸しパン。これは一体どういうことだ。

「怜さぁ、そんなに上鳴くんのことが気になるなら話に行けばいいじゃん」
「別に気になってない!」
「ふーん、まあいいけどお礼くらいは言っといたら?あんたの話聞いてるといい人そうじゃん上鳴くん」
「私はまだ完全にいい人って認めてないし…」

隣でカレーライスを食べる我が友人が面倒くさそうに私を見る。私は上鳴電気のいる方から顔をそらして蒸しパンを一口齧った。やっぱり蒸しパンは美味しい。

しばらく、もしゃもしゃと蒸しパンを頬張っていたら上鳴電気が椅子から立ち上がったのが見えた。どうやら食堂を出るらしく、入り口付近でご飯を食べていた私達の方へと歩いてきている。そして私の前まで来て、ばちりと目が合う。やばい、やってしまった。

「あれ、葉山さんじゃん!無事蒸しパン買えてるみたいで良かった」
「あ、えと、うん。上鳴電気も買えてるみたいだね」
「そうそう!俺、購買のおばちゃんと仲良いから蒸しパンの在庫増やしてもらえるように頼んだんだよ」
「えっ、そうなの…?」
「俺これからも蒸しパン買いたいし、それに葉山さんも食べたいだろ?」
「うん…」
わざわざ、頼んでくれたというのか。私より購買にくるのが早いのだから、別に買えなくなることなんて無いだろうに。
もしかしなくても、上鳴電気はいいやつなのかもしれない。

「葉山さーん?葉山さん、聞いてる?」
考え事をしていて上鳴電気を無視していたらしい私の前で彼が左右に手を振った。

「えっ、は、はい!」
「ずっと気になってたんだけど上鳴電気ってフルネームで呼ぶのやめね?」
「あ、そうだよね、変か」
「電気でいいよ」
「えっとその、電気くん?」
「うん、そっちのがぜってーいい!よろしく怜ちゃん」

ずいっ、と上鳴電気…電気くんが私の前に手を出して来て、反射的に私も手を出して彼の手を握った。というか、さり気なく怜って呼んだ。コミュ力高過ぎでしょ、いみわかんない。顔がすごく熱くなる。なんでだ。どくどくと身体中が脈打つみたいにすごく緊張してる。どうにかなってしまうかもしれない。爆発でもするんじゃないのか。

「おい、上鳴何してんだ、行くぞ〜」
「おー!今行く」

遠くの方で赤いツンツンした髪の男の子が電気くんを呼んだことで私の手から彼の手が離れていく。少し、安堵した。

「じゃあな、怜ちゃん」
「うん、またね電気くん」

去って行く電気くんに手を振る。そしたら電気くんは所謂、太陽のような笑顔で手を振りかえしてくれた。どきん、とまた心臓が脈打った。一体これは何なんだろう。

私は電気くんの後ろ姿から目が離せなかった。


20150301

 

 

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