「上鳴電気!私はお前を許さない!」
「は?」

上鳴電気。雄英高校ヒーロー科1年次A組。個性は名前の通り電気とかを使う奴だったはず。私は今日、とうとうこいつに言ってやった。

「お前確かB組の…」
「葉山怜!」
「んで、なんで俺を許すとか許さねえとかいう話になってんの?」
「それは…」
怒りだか、悲しみだかで私の肩は小刻みに震えていた。

「それは?」
「上鳴電気、お前がいっつもいっつも購買で蒸しパンを買って行くから私は入学してから一回も蒸しパンにありつけたことがない!」
「…蒸し、パン?これのことか?」

上鳴が手に持っていた蒸しパンを私の方へ見せる。ああ、なんて美味しそうなんだろう。本当に忌々しい。私の方がこいつより遥かに蒸しパンを愛しているだろうに。午前の授業が終わってどれだけ購買に急いでも毎回上鳴電気に邪魔をされるのだ。そもそもA組の方が購買に近い。圧倒的に不利である。
思わず睨みつけたら、上鳴電気はきょとん、と私を見た後、くすっと笑って私の片方の手を掴んでその上に蒸しパンを乗せた。意味がわからない。自慢か?自慢なのか?食べれない私に対しての侮辱なのか?

「やるよ、それ」
上鳴電気の口から出たのは予想外の言葉だった。
「え、くれる、の?」

びっくりして、つい数秒前まで恨んでいた目の前の男を呆然と見た。

「おう。俺別に他に食うもんあるし。葉山さん食べなよ、食べたかったんだろ?」
「あ、え、…うん」
「んじゃあ、行くな。」

上鳴電気は私に背を向けるとどこかへ歩いて行った。それにしても、と手に乗せられた蒸しパンを見る。にやにやと口角が上がるのがわかる。廊下に目を戻すとそこにはもう上鳴電気の後ろ姿は無かった。

上鳴電気。今度会ったときは挨拶でもしてみようかな。





20150228
本誌で蒸しパン持ってるコマがあったのでそこから勝手に捏造


 

 

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