あれから2ヶ月ほど経って夏休みに入った。
相変わらず森山を見るとざわざわと落ち着かないことはあったが、それ以外は特に困ることもなく月日は流れた。

そして、友達伝に森山を含む海常高校バスケ部がインターハイに出場することが決定したと聞いた。その友達も俗に言うキセリョファンで、その手の情報なら耳を塞いでも伝わってくる。恐るべし黄瀬涼太。

でも私は彼のファンではない。そりゃあモデル業もやってスポーツも出来るなんてすごいとは思う。プライベートな時間がとれないだろうな、とも。
だが森山にいろいろ愚痴を聞かされているのだ、女の子にモテるやつが来ただの、生意気だの。そんなの四六時中聞かされる方にもなってほしい。それこそ耳にタコだ。黄瀬の黄の字も聞きたくない。お腹いっぱいだ。主に森山のせいであるが。

「インターハイかぁ…」

徐にスマホの画面を見たらメール受信通知が来ていた。
誰だろう、と謎に思いつつメールを開いたらそこに映し出されたのは"森山"の文字。そういえばこの前メアド交換したんだった、忘れてた。

メールにはインターハイ出場決定の知らせと日時が。
「なにこれ、来いってこと?」

めんどうだな、と思いつつも部屋にかかっていたカレンダーを横目で確認したが空いていた。というか受験生なので予定なんぞほとんど入れてない。あるとすれば塾ぐらいなものだ。

はあ、とため息一つついて森山に返事を返した。

"見に行くからかっこいいとこ見せてよね、森山くん?"





後日、私も行きたい!と言ったキセリョファンの友達とインターハイを見に行った。適当にコートが見える位置に座るとどうやらまだ試合は始まっていないようだ。何日かあるインターハイだが、今日はベスト8が決まる大事な日だ。つまり彼らは勝ち進んで来ているのだ。かなりの強豪で、しかもスタメンとか森山なんなの?知らなかったんだけどすごいやつだったんだ。そう考えるとなんだか彼があまりにも遠い存在に思えた。

「あ、見て見て怜!黄瀬くんだ!」

「痛い痛い!わかったから!!」

友達にバシバシ、と腕を思い切り叩かれ痛い。心ここに在らずといった感じで既に彼に夢中のようだ、全く。

友達の指差す方へ視線を向けるとそこには海常のメンバーがウォームアップをしていた。あ、森山発見。
森山は一人キョロキョロと周囲を見渡しているようだがなにしているのだろうか。珍行動が面白くてついつい見いっていたら森山がこちらへ視線を向けた。

さすがにこの距離で私に気づくのはあり得ないだろう。と思ったらバチッと目があった、ような気がした。が森山はすぐ顔を反らした。やはり気のせいだったかも。


そしてその後すぐ今日のインターハイは幕を開けた。それからのことはよく覚えてない。周りの熱気や選手から伝わる緊張感それに圧巻されていたのもある。だけどそれ以上に、森山のシュートに魅せられた。他の人に比べてフォームは乏しいのに、回転数の足りないへろへろとしたボールはまるで意思を持っているかのように簡単にゴールに吸い込まれていく。その行為がボールに命を吹き込んでいるようにも見えて。


私にはどのシュートよりも綺麗に見えた。




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長かったので切りました。
森山との会話がない。というか会話文が…

20140108

 

 

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