学校が終わり、いつもの帰路につく。閑静な住宅街、規則的に並ぶ電柱、春になれば桜が綺麗に咲き誇る。
幼いころから歩き慣れた、なんの変鉄もない道。数年たっても何も変わってはいない。

私の隣にあいつが居ないことを除けば。



糸目で関西弁でメガネ、第一印象はそんな感じ。中学になって関西から転入してきた幼馴染み、今吉翔一とは別々の高校に入った。

翔一が行ったのは桐皇学園。地元からだと少し遠い。

だから翔一は今年の春、隣街で一人暮らしすることなった。

ずっと一緒に居れるんだと思ってた。高校が違っても休日に顔合わせたり、一緒に夕飯食べたり、できると信じて疑わなかった。

――中学3年の冬までは。

「怜聞いてくれへん?ワシな、桐皇学園っちゅーとこ行くんや。」

「桐皇学園?」

「こっからちぃと遠い所にあるんやわ。」

「えっ」

「すまんな、怜。お前と一緒におれんくなってしもた。」

彼は眉を下げてそう言った――


あれから1年。高校に入学してから翔一はこっちに帰って来ていない。なんでもバスケ部のレギュラーに選ばれたとかで練習に明け暮れているらしい。

「会いたいなぁ」

この帰り道はこんなに寂しかっただろうか。学校はこんなにつまらなかっただろうか。

「全部、全部、翔一が居たから楽しかったんだね…」

一筋、涙が頬を伝った。

「泣き虫やなぁ、怜は」

一人感傷に浸っていたら背後から懐かしい声が聞こえた。

「しょ、いち?」

「ただいま。冬休み貰ったから帰って来たわ」

冬休みもバスケの練習で忙しいから帰ってこれないんじゃなかったのか。でも目の前で笑う彼は確かに私の知っている翔一だ、そう思ったら足が自然と動いた。

翔一との距離が縮まっていく。そして私は翔一に抱きついた。

「馬鹿、馬鹿、馬鹿」

「…久しぶりに会ったっちゅーんに一言目にそれかいな。」

「会いたかった…っ」

私は翔一の腕にしがみついた。コートがしわしわになるぐらい握りしめたのに翔一は怒るどころか抱きしめ返してくれて、久しぶりの彼の温もりに涙が止まらない。こんなに泣いたのは翔一が引っ越した日以来だ。

「…ワシも会いたかったで」

翔一の胸に顔を埋めている私の頭に顎を乗せて彼はそう言った。

「帰って、これないって、言ってたじゃんか…」

「嘘やて。サプライズで帰ってきたったら怜が喜ぶやろなと思ってん。」

「ほんと最低」

「あっははは、まあそうやわな。すまん、すまん。」
翔一は笑いながら私の頭を撫でた。最低だと思ったけれど嬉しかったから許す。私は現金な女だ。

「ほな、帰ろか」

彼の手が私の手へと伸びて絡まる。二人肩を並べて家へと向かう。



もう、帰り道は寂しくなかった。


20140120

 

 

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