真ちゃんと正式にお付き合いを始めて1ヶ月が過ぎた。

最近は真ちゃんの部活が終わるまで教室で待ち、一緒に帰るのが定番になりつつある。

「先に自販機でおしるこを買ってもいいか?」

教室まで迎えに来てくれた真ちゃんと暗い廊下を歩きながら他愛もない話をしていると真ちゃんはそう告げる。これも私達の日常だ。決まって彼はこう言う。もう自分達の足も自然と昇降口へ行く前に自販機に向かってしまう程には当たり前の行動になりつつあるのに彼は必ず断りを入れるのだ。律儀だけれどそこが真ちゃんの良さだと思う。


ボタンを押してガコン、と出てきたおしるこ缶を屈んで取りだした真ちゃんは慣れた手つきで缶のプルタブを引いて開けるとおしるこに口をつけた。その姿はあまりにも綺麗でかっこよくて何度見ても心臓が跳ねる。

「ねぇ、真ちゃん。いつも同じおしるこ飲んでるけど…そんなに美味しいの?」
「あぁ。やはりおしるこが一番美味いのだよ。」

真ちゃんがそこまで絶賛するのだから、美味しいのだろう。
気になって、ついおしるこ缶を見つめてしまう。おしるこは飲んだことがあるが、缶タイプは未だかつて飲んだことがない。


じゅるりと涎を垂らしそうになる。それだけは避けねばと口を一文字に結んだ。

「…怜も飲みたいのか?」

そう言いながら真ちゃんは私が頷くよりも早く、おしるこを飲み干してしまった。飲みたいのか聞いておいて自分で飲んでしまうなんてそれはどうかと思うのだ。

「酷い…」

真ちゃんを見上げて睨んでやると、ふっと影が落ちる。真ちゃんの顔が近づいてきたからだ。

「…えっ」

そして真ちゃんの唇が吸い寄せられるように私のそれと重なった。

びっくりして声を出したために薄く開いていた私の口はいとも簡単に真ちゃんによって抉じ開けられた。

「…んん?!」

真ちゃんの口内にあったそれがいきなり私の口内に入ってきた。甘い液体に驚きながらも、拒むことはせず飲み込んだ。

ゴクッと最後の一滴を喉に流し込んだところで口を離される。
キス、されたのだろうか、確かめるように自分の唇にそっと触れた。

「どうだ、やはり美味いだろう?」

私の思考が追い付いてくれないことを良いことに真ちゃんは不敵に笑った。いつもの真ちゃんとは違う。今日はちょっと破廉恥じゃないか。無性に恥ずかしくなって、声も出さずにただ懸命に頷いた。


はっきり言うと美味しいとか、美味しくないとかよくわからない。甘かったような気もするがそんなことより真ちゃんの大胆な行動に度肝を抜かれて味なんてわかったもんじゃない。


「い、いつもの真ちゃんじゃない…」

いつもなら顔を真っ赤にしてそれこそ"破廉恥なのだよ!"と叫びそうなものだが熱でもあるのか。

ま、まさか偽物の真ちゃんじゃ…。

「本物に決まっているだろう。」

「へっ?」

今、真ちゃん私の心読んだ?超能力?え、真ちゃんすごい。

「口に出ていたのだよ…」

口に出てた?なんだ、そうか、納得納得。と笑って返せば彼ははぁ、と呆れたようにため息をつく。

「お前は相変わらずデリカシーがないのだよ。」

「路チューした真ちゃんに言われたくないんだけど」



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前のサイトで書いたもののリメイク話です。
20131229

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