無条件の愛を知らないのに
「怜ちゃん、一緒に飯食おうぜ!」
「あ、桑田くん…。えっと、あの、はい。」
俺は最近葉山怜ちゃんを狙ってる。いや、なんというか、俺らしくもなくちょー大真面目に手も出さずに優しく、ちょっとずつちょっとずつ関係を築いて早3ヶ月。この子にどうやら俺は本気で恋しちまってるらしーんだよな、これが。
クラスのやつら殆どが俺が怜ちゃんにアタックしてることに気づいてるのに、アタックされてる本人と来たら今日も穢れのない天使のような顔で微笑むもんだから、もうほんと鈍感だと、好きだと一言いってやりてーぐらいだったりする。
だけどそれが出来ないのはきっと嫌われたくないからだ。やっと笑ってくれるようになった。それが俺の一言でまた逆戻りか、それ以下なんてことになったら生きてけねーのはわかりきっている。好きなやつに嫌わるぐらいだったらまだ今はこのままでいい。
「怜ちゃん今日も弁当?うまそー」
最近の定番。俺は決まって昼休みに怜ちゃんと飯を食べる。最初こそ困ってたけど最近では楽しそうに弁当の中身を見せてくれたりする。もうほんとずりぃーの。可愛すぎるんだって。
購買で買ったパンと、怜ちゃんの弁当のおかずをわけてもらいながら昼食をとる。
「あ、怜ちゃん、ほっぺご飯ついてる。」
「へっ、どこですか…?」
「ここ」
俺は怜ちゃんに顔を近づけ、そしてそれをなめとった。
「……やっ!」
どんっ、と胸を押されて思考が停止した。完全なる拒絶。…早まりすぎた。
「悪い、怜ちゃん。嫌だったよな、」
俺はその場に居づらくなって席を立った。怜ちゃんの顔が見れなかった。俺、やっちまった、やべー。
暫くは距離置いた方がいい、よな。弱気な俺とかまじでキモい、そう心で罵ってやった。
「はは…、なさけねー…」
その日から俺は昼飯を怜ちゃんと食べるのをやめた。何かと理由をつけて断っている。そして、今日も。
「あの、桑田くん…」
「あ、わりぃ怜ちゃん、俺今日も一緒に飯たべれねーの。」
ごめん、と顔の前で手を合わせて謝罪。
「…な…っ……で…」
「へっ?」
目の前には泣いてる怜ちゃん。俺が、泣かせた?なんで、
「私、桑田くんに嫌われちゃいましたか…?私、私…」
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら怜ちゃんは聞いてきた。胸が苦しくなった、なんで好きなやつを泣かせてしまったのだろうか。さいってーだな、俺。
周りがざわざわし始めたところでここが教室であることを思い出した。二人っきりでちゃんと話がしたい。
「怜ちゃん」
俺は泣き続ける怜ちゃんの手をとって小走りで教室を出た。そしてたどり着いたのは、よく一緒に弁当を食べる空き教室。ぴしゃん、と扉をきっちり締めて怜ちゃんに向き直った。
「なぁ、怜ちゃん、なんで泣いてるのかもう一度聞かせてくんね?」
屈みこんで、怜ちゃんに顔をあわせたら、未だ止まらない涙を流しながら必死にこくこくと頷くもんだから不謹慎だけど可愛いと思った。
「ごめんなさ、私、自惚れてました。どんなに、桑田くんを困らせちゃっても私から、離れないでくれた、からっ…」
だから、あからさまに避けられて嫌われちゃったって、と怜ちゃんは続けた。
「なんだよ、それこっちのセリフだってば…」
俺だって自惚れてた。どんなに困った顔してても、俺のこと断りはしなかった。笑い返してくれた。
「怜ちゃん、好きだ。好きだ、好きだ、好きだ。」
俺が言い出せなかったその想いは、思ったより簡単に口からこぼれ落ちた。
「え、…なん、で…私嫌われちゃったんじゃ」
「ちげーって、あれは、その、怜ちゃんに嫌われたと思って」
そういえば、俺怜ちゃんに嫌われてはいないんだよな?え、そうじゃねーの?久々にこんなに頭をフル回転させたから混乱してきた。
「ちが、あのときは恥ずかしくてっ!」
さっきまで泣いてたのに今度は照れてる、表情がコロコロ変わって見てて全然あきねー…じゃなくて、え、恥ずかしい?じゃあ、もしかして
「なぁ、怜ちゃん。怜ちゃんの気持ちもそろそろ聞かせてくんね?」
そういったら、ぼっと顔から火が出そうになるぐらい赤くなってて笑った。あーあ、もうそれ答えじゃん。なんで今まで気づかなかった、桑田怜恩。
「私も、はじめて話したときから、桑田くんが好きです。」
嬉しくて怜ちゃんを抱き締めちゃうのはその数秒後。
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リクエストありがとうございました。アタック、できてましたかね。
20131004
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