アイデンティティ×不可予測



「ねえ桑田くん。彼氏ってどうやったらできるの。」

私はそう彼に問うた。なぜこんなことをきいてるのかというと理由は簡単なんだけど"周りに取り残されている"からである。つまりは、周りにいる友人達が彼氏を作り、最初は5人で食べていた昼食も「彼氏と食べたいから、ごめん!」とまた1人また1人と減る。下校、登校も然り。そして私はついに今日最後の1人にも見放され1人となったのだけれど近くで暇そうにしていた桑田くんをひっつかまえて今に至る。

「それはわかったけどさぁ、なんで俺がつれてこられてんの。」

「だって暇そうにしてたし。」

「暇じゃねーっていったのに無理やりひきずってったのは怜ちゃんだろぉ!」

まあ、はいそうですね。

「だってさ、寂しかったんだもんぼっち飯とか。」

へへへっごめんね、って謝る。1人は嫌いだ、寂しいと死んじゃう。まるで兎みたいだなって嘲笑った。

「そんな顔すんなよな…」

そう呟いた彼の声は私には届いてなかった。

「よし、決めた!怜ちゃん」

「ん?どうしたの?」

「怜ちゃんが彼氏できるまでは一緒に飯食ってやるよ…!」

こうして私と桑田くんはクラスメイトから一緒にお昼を食べる仲へと格上げ。もともとクラスメイトの中でもわりと仲のいい方に入ってたんだけど私を見捨てていかなかったのはかなりポイント高いです。いや調子乗りました見捨てないでくれてありがとう桑田くん。


「てゆーかさ、彼氏欲しいのはわかったけど、怜ちゃん好きなやついんの?」

「あ」

盲点だった。私好きな人なんていないじゃん、彼氏永久にできないじゃん。

「…いねーのな」

「あははは…」

強いていえばこの人っていう人はいないのだろうか。でも適当にじゃなくて本当に好きだって思った人を彼氏にしたい。
ふと、目の前にいるこの男を見た。

桑田くんっていま思うとかっこいいよね、顔とか見た目もそうだけどチャラい癖に真面目に相談乗ってくれたり、私のこと嫌がるどころかご飯も一緒に食べてくれるし。おもしろいし。

―バチッ。目があった。瞬間に背筋がゾワゾワして身体中の毛が逆立った。我慢できなくて目をそらしてしまう。なんだ、なんなんだ。

「怜ちゃん?どうした?」

心臓の音がやけに大きく聞こえる。桑田くんの声が耳に入る度に身体が跳ねる。


…あぁそうか、私桑田くんが好きなのかもしれない。いまのいままで自覚してなかった。だってこの恋愛相談だってそうだ、暇そうにしてた人なんて桑田くん以外にもたくさんいたし、そのなかに桑田くんよりも仲いい人だっていた。つまり私は桑田くんを選んだんだ。

「な、なんでも、ない。」

「ちょ、怜ちゃん大丈夫かよ、顔真っ赤…」

「だだだだだ大丈夫っ!桑田くんいいい意識したら恥ずかしくなったとかそんなことぜっ全然これっぽっちもないから!!」

「えっ」
「あっ」

……やばい、墓穴掘った。ギャグ漫画並みの酷い模範的な墓穴の堀り方した。あ、ちょ、どうしよこれ。せっかく好きって気づいたのに即失恋とか涙でる。もう最悪だ…ほんとに…。


「あー…えっと怜ちゃん、」

「いや、ごめんさっきのは冗談だから!き、気にしないでっ!」

誤魔化せるなんて思ってなかったけど必死になって弁解してみる。

「なっ、今更冗談とかしらねーからな!……俺は怜ちゃんが好きだ。」

「へっ?」

これは私の聞き間違いですかね?だっていま桑田くんから好きって。えっ。

「俺、前から怜ちゃんのこと好きだった。無理矢理とはいえ大人しく怜ちゃんについてったのも、昼飯一緒に食べてやるっつったのも全部すきだからにきまってんだろぉ!男ってのは下心無しじゃ生きれねー生き物なの!」

桑田くんはそう捲し立てると、一息ついてこっちを見た。目と目が交わって顔に熱が集まる。

「じ、じゃあ両思い?」

意を決してそう問いかけた。桑田くんの答えはもちろん肯定だ。

「でも恋愛相談のときとか平然と…」

「…っ、嫉妬でどーにかなるの抑えて必死に顔に出さねーようにしてたの!」

そのぐらいわかれよ、アホォと怒られてしまったのだけれどそんなことより状況が把握できないんだ。
桑田くんが好きだと気づいた数秒後には告白(事故だけど)してて、そのまた数秒後には両思いなんて。
数秒先の未来さえも予測不可能。


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未栄様リクエストありがとうございました!素敵なシチュエーションでしたが難しかったです;;;書き直し、ダメ出しなんでも受け付けますので!

20131009

 

 

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