背伸び




ふと、口に出していた。

「石丸くんと私どっちが身長高いかな」

「…どう見ても僕じゃないか?」

そう、石丸くんがいう通り私の方が明らかに低い。一目瞭然というやつだ。

「そうだよね」

そういって私は肩を落とした。私が石丸くんの身長に近づきたいのには理由があった。

「いいなー、背伸びしたら石丸くんと同じぐらいになるかな」

「…なぜ同じ身長がいいんだ?」

「石丸くんと同じ世界が見てみたいからだよ。」

間髪入れずにそう答える。そう、私は石丸くんと同じ世界が見たかった。初めて彼を見たとき彼の瞳には穢れなく、輝いていた。私とは大違いだった。至って平凡。何をしても周りより劣ることはあるが優ることはない。そんな凡人から見たら彼はすごい才能を持っていた。しかしそれは生まれつきのものでなく努力あってこその輝き。その瞳に映る世界が見たい、強くそう思ったのはここ最近の話ではない。

「じゃあ僕が怜くんと同じ身長になればそれは僕の世界になるのではないかね?」

そういうと石丸くんは私の身長に合わせて屈んでくれた。
一瞬固まってしまった。これだから彼は面白いのだ。強引に人を引っ張っていく癖にこう言うときは私の歩幅に合わせてくれる。彼は気づいていたのかもしれない。私は早く彼に近づきたくて、必死だった。彼の世界を見ればもっと彼に相応しくなれると思った。

「んーそういうもの?」

曖昧に返す。

「僕が見ている世界にはかわりないだろう?」

確かにそれはそうだ。間違ってはいないけど…。

「石丸くん出会った頃より意地悪な気がする。」

出会った頃の彼ならもっと違う返し方をしていたと思う。彼も駆け引きがうまくなったというかなんというか。

「怜くんに毒されてしまったかもしれんな。」

私の世界に彼がいるように。彼の世界にも私がいて。お互いが刺激しあってる。そんな関係もいいかもしれないと、彼の言葉を聞いて思った。

「じゃあもっと侵食してあげる」

そういって私は背伸びして彼に顔を近づけた。



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ちょいと短めでした。
20131201

 

 

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