『石丸くんと喧嘩』の続き。
「葉山くん」
「ん…」
よく知るその声に導かれ、数秒前に閉じた瞼を再び開けた。
瞳に入ってきた電気の光で一瞬眉を寄せたが次に私に入ってきた光景に目を見開いた。
「石丸…くん…」
「葉山くん良かった死んでいるのかと心配したぞ。」
石丸くんは困ったように笑った。良かった、どうやらさっきのことは怒ってないみたいだ。
安堵したと同時にまた涙が溢れた。自分の意思と反してそれは次々に流れるのだから困ってしまう。
「葉山くん?!どうしたんだね、どこか痛むか?」
「ちが、ちがうから…っ、さっきは急に怒ったりしてごめんなさい…っ」
この思いが石丸くんに届くようにと私はしゃくりをあげながらも一言一言紡いだ。
「…!いやあれは僕が悪かったんだ。前から約束していたと言うのにそれを破って僕は兄弟と探索に行こうとしてしまった…。」
「で、でも私、馬鹿って、言っちゃったっ…」
もう色々と悔いるところが有りすぎて頭がごちゃごちゃになってしまう。それに涙は止まるどころかさっきより勢いが増して、私顔汚いだろうな、なんて。
「怜くん…!」
時が止まった。そう思えた。だっていま石丸くんは私の後頭部に手を回していて。抱きしめ、られてる?
それは初めての行為だった。
「すまない。不純だと自分でも思うのだ。しかし怜くんが泣いているのを見たらどうしても抑えられなかった。泣かないでくれ。僕は馬鹿と言われたことは気にしてないぞ。寧ろ言われて当然の最低なことをしたと思っている。」
だからおあいこだ。そういって頭を撫でてくれた石丸くんにまた涙が出ちゃって困らせちゃったのは言うまでもない。
20130902
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