「ねえねえ大和田くん」

私は気になっていることが1つあった。

「あ?どーしたんだよ」
「髪の毛どーなってるの」

そう、大和田くんのリーゼントだ。彼の頭はまるでとうもろこしのようになっていて、セットにもかなり時間をかけていそうなのだがそこは問題ではない。
髪がワックスでバシバシには見えないというところが問題だ。

「髪の毛どーなってるって、そりゃあお前見たまんまじゃねーか」
そう言って大和田くんは私に頭を下げる形で髪を見せてきた。触りたい。すごく触りたい。

「大和田くん、さささ、触ってもいい?」
「はぁ?ダメに決まってんだろうがぁ!これセットに時間かかんだよ」
彼は自慢げに腕を組んでそう言った。確かに時間がかかっているだろうことは見て取れた。だって普通じゃあり得ないくらいの超次元な髪型だし。こんな髪作れるなんて大和田くんは体格に似合わずかなり器用なのかもしれない。
そう思ったら目の前にいる彼がすごく可愛らしくみえた。


「 おねがい!絶対にセット崩したりしないから!」
私は必死に懇願する。大和田くんは案外推しに弱いのはリサーチ済みなので、ずっと頼めばいつかはさわれせてくれるはず、だと思う多分。なぜこんなに弱気なのかといえば彼の眼力がやばいからだ。既に私は彼に睨まれていて、まさに蛇とカエルだ。

「チッ...仕方ねぇやつだな。おら、さっさと触りやがれ」
私の思いが通じたのか、大和田くんは私の前でしゃがんでくれて、私の鎖骨くらいに頭が来た。動くたびに形が崩れることなくフワッと揺れる。ああ、触りたい。

「じゃあ、失礼して」
私はごくり、と生唾をのんでゆっくりと手を伸ばす。ふわり、頭に軽く手をおいた。
予想通りの髪質に最早感動を隠せなくて転げ回りたい衝動を必死に抑えた。

「大和田くん」
そう呟いた私の声は確かに震えていたと思う。次の瞬間、私はまさに辛抱堪らん、といった感じで彼の頭を抱きしめた。

「は、ちょ、お前ふざけんな!くそが!!離しやがれ!」
暴れる大和田くんに引っぺがえされて、セットが崩れただの、いきなり抱きつくな、など散々お説教を食らってしまったのは言うまでもなかった。



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大和田くんハッピーバースデー!
20140609


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