鬼灯様の補佐をしている私は、バレンタインの今日、午後から有休を貰って天国に遊びに行くことにした。
「こんにちは」と声をかけて戸を開けると、「いらっしゃーい」とにこやかに手を降って迎え入れてくれた。相変わらず彼は女の子が大好きのようだ。
「白澤様!突然ですが、今日はなんの日だ!」
そんな白澤様に一つクイズを出した。白澤様が知らないはずがないけれど。
「バレンタインでしょ?」
「さっすが!物知りですね!」
「ということで、はいどーぞ」
そう言って白澤様から渡されたのは、可愛い赤色の髪飾りだった。装飾品が派手でない物だが、それがまた大人な雰囲気を醸し出していて、品のよさが伺える。
だけれどバレンタインデーなのになぜ白澤からプレゼントを渡されたのか、理解に困った。誕生日はまだまだ先だし、確かに逆チョコも流行ってはいるが白澤様がくれたのはチョコでなく髪飾りだ。
「なんでですか?」
わからなくて、そう問いかけた。
「あれ、名前ちゃん知らない?バレンタインはね、日本以外の国では男から女の子に贈り物をする日なの。だから僕からも君にプレゼントだよ」
なるほど、と納得する。私は再度差し出された髪飾りを素直に受け取った。
「ありがとうございます、嬉しいです」
そう笑った私より白澤様の方が嬉しそうに笑っていて、優しいなぁ、と思う。
「つけたげるからこっちおいで」
そう手招きされて白澤様に近づいて髪飾りを返し、後ろを向いた。
すると突如背中に重みがずしっときて、驚いて後ろをを向こうとしたら、耳元で白澤様の吐息が聞こえてくすぐったくなる。どうやら、私は白澤様に後ろから抱き締められているらしいことを理解した。
「本当君って無防備だね。僕以外にはこんなふうに軽々しく近づいちゃダメだよ」
耳元で囁くように白澤様が言うものだから恥ずかしくなってコクコクと必死に頷いた。
それを確認した白澤様が私から潔く離れてくれてホッとした。白澤様とすこし距離をとった。
「さて、今度こそつけてあげる」
白澤様に言われて私たちの距離はまた近づいた。
20140214
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