「宮地のバカヤロー!」

その一言で私は1週間ろくに宮地と話していない。きっと喧嘩した理由なんて些細なもので、よく覚えていないけどそのときはお互いに譲らなかった。

そして今日はバレンタインデーだ。恋人達にとっては幸せな日なはずなのに私と宮地はなぜこうもタイミングが悪いんだろう。私は朝から憂鬱になって重いため息を吐いた。

昼休み、後輩である高尾達にチョコを渡そうと、教室から廊下に出たときだ。前方から蜂蜜色の彼が歩いてきた。宮地だ。

げっ、と思いながらも喧嘩中だしと無視して通りすぎようとしたら「おい」と声をかけられた。

「なに」

「お前さそのチョコ誰にやるんだよ」

無視したから、いつもみたいに怒るのか、と思ったらどうやら宮地は私の持っているチョコが気になるらしい。

「えっ、高尾とか緑間とか」

「なんで俺にはねえ訳?」

「宮地は嫌いだから無い」

宮地のあからさまな嫉妬に内心、くすりと笑いながらも顔には出さずに返した。因みにチョコが無いのは嘘だ。ちゃんと鞄のなかに別のが入ってる。

「お前なぁ…」

そう言って眉をひそめた宮地にもう一押しと言わんばかりに私は口を開いた。

「謝ったらあげる」

いつも私から謝ってばかりだからたまにはこの短気な蜂蜜パイン野郎から謝らせたってバチは当たらないと思う。

流石にここまできたら折れてくれるだろ、と期待していたのに宮地は「謝らねえけどもらう」なんて言って私の腕にあったチョコの箱を強引に奪い取ると、包装を剥がし始めた。ちゃんと私なら自分の分も用意するだろうとわかっているはずなのに、あえて私から他の人に贈るものを横取りするんだから大人げないなぁ、とその光景を見て苦笑いを浮かべた。

宮地は箱の中からチョコを一粒つまむと自分の口ではなく私の口元へ持っていった。不思議に思うが逆らうことはしないで口を開けたらぽい、と中にチョコをほおり投げられて口の中で甘いチョコが溶ける。

そしたら今度は宮地の顔が近づいて来てそのまま口を塞がれた。

ぬるっとした物が口内に入ってきて舌に残ったチョコを舐めとる動作をして引っ込んでいった。


「ごっそーさん」
いかにも、してやったり、と言いたげなニヒルな笑みでそう告げた宮地は、満足そうな顔をしていた。頭をポンポンと叩かれた私は瞬時にキスされたことを理解して顔に熱が集まるのがわかった。

結局彼の方が一枚上手なのだ。きっと一生かけても宮地に勝つことは出来ないだろうなと思いながら仲直りするために、去っていった宮地を追いかけた。



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よく考えたら廊下でキスしてるわ…
20140214


 

 

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