今日はバレンタインだ。ということで私は朝から大和田くんを探している。
毎日のように追いかけ回していたら、いつの間にか避けられるようになっていた。それはバレンタインデーである今日も変わらなくて私は肩を落とした。

「どうしたのだ、名字くん」

「あ、石丸くん」

偶然にも私の前を通った石丸くんが声をかけてきた。そこではた、と考える。石丸くんは大和田くんと仲がいい。石丸くんなら居場所を知っているかもしれない。そう思い立った私は大和田くんを探していることについて石丸くんに告げた。

「あぁ、兄弟なら休み時間はよく空き部屋にいるようだぞ。駄目だと言っているんだが聞いてくれなくてな」

石丸くんの話から空き部屋はまだ調べてないことに気がついた。

「ありがとう」と石丸くんにお礼を言うや否や私は空き部屋へ向かって駆け出した。後ろから「廊下は走らないでくれたまえ!」とか言っていたがごめんね、石丸くん。恋する乙女は止まれないのだ。



1つの部屋の前に立つ。
知る限りのほとんどの空き部屋は回り、残すところあと目の前のこの部屋のみになった。

「たのもー!」
そう言って扉を力強くあけたら、私の大好きなリーゼント少年が目に入った。どうやら当たりらしい。

「大和田くんこんなとこにいた!探したんだよ?」

床に座り込んでいる大和田くんは驚いたように固まって、ぴくりとも動かない。私はそんな大和田くんに近づいてしゃがみこむと、目の前で手を降った。すると我に返ったのか、大和田くんはガタン、と大きな音をたてて私との距離をとった。

「お前なんでここが…」

「石丸くんが」

「あの野郎…」

「それはそうと、はい」

もちろん私は当初の目的を忘れてはいなかった。ポケットから綺麗に包装したチョコを取り出し、大和田くんに差し出す。

かろうじて「おう」と返事をして恐る恐る受け取ってくれた。どうやら何かわかっていないらしい。

「本命だからね」

私はそう付け加えた。すると大和田くんは厳つい顔をみるみるうちに紅く染めた。このギャップが可愛くてたまらない。

「てめえ、ふざけてんのかよ」

「ふざけてるのはどっち?ずっと好きだって言ってるのに」

「は?お前だってあれ、冗談じゃ…」

「そんなわけないでしょうが」

この人はここまで言わなきゃわからないのか。鈍いなぁ、とため息を一つ。もう一度今度はしっかりと言葉を紡いだ。

「好きです。」

私がそう言うと大和田くんは、あーとか、うーとか言葉にならない言葉を言って、がしがしと首の後ろを掻いた。

「俺も好きだ」

そう言って大和田くんは照れ臭そうに笑った。ああ、やっと伝わったのかと私も嬉しくなって笑い返した。


20140214

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