マイムマイム

うれしい時に踊る曲といえば、そう、アレですよアレ。
――マイムマイムですよ!
ふんふんと鼻歌を歌いながらマイムマイムを踊る。
こんなに心を込めてマイムマイム踊ったのは初めてだが、結構楽しい。
「マーイムベッサソーン!」
ちなみにこれ一人でやっているとちょっと寂しいです。

マイムマイムとホッピングを周期的に繰り返していると、
「……何してんの?」
突然後ろから声が聞こえた。
――今はそれどころではないんですが。
私は踊りながらも丘から見える景色を観察しているのだ。
地形と建物の大きさ、人の動き具合。
見るべきところがありすぎて目が離せない。
でも返事をしないのも礼儀としてどうなのかという話なので、一応答える。
「踊っています」
「どうして?」
「嬉しさが体から溢れ出ているのです」
「へぇ、そっか。君って……変わっているね」
満面の笑顔で跳び跳ねている黒いジャージの女の子。
客観的に見ると、確かに変な人である。
ホッピング、ホッピング。
「ねぇ、疲れない?」
面白がるような口調である。
――ちょっとウザいですねこの人。
「……少し疲れました、休憩しようと思います」
なんとか適当にあしらって帰ってもらおうと、声の主を振り替えると――
「はっ、エ、エースさんではないですか!!」
赤いロングコートを着た騎士が立っていた。
「え、なになに?気づいてなかったのか?」
「はい全く。そこら辺を歩いている役なしかと思っていました」
こんなにもいかがわ……ごほん、特徴的なお声なのに気づかないとは。
自分の耳もまだまだですね。
「酷いなぁ。まぁでも、ずっと踊っていたからしょうがないか。君は何が嬉しくて踊っていたんだ?」
「ええと、……」
――いきなり自分の大好きな世界に来れて、アリスがかわいくて、アリスがかわいくて……。
「ええ? 言えないようなことなのか?」
いえ、信じてもらえないかと。
というか、今はどの国なのでしょうか。
先程見た地形的にはハートの国っぽい。
でも、アリスがここに来ているかどうかとか、色々と確認しなければいけないことがある。
かといってこの変た……げほげほ、素敵な騎士さんに聞いた情報を鵜呑みにするのは怖い。
そういう事が全て分かって、信頼のおける人と言えば……。
――ユリウス=モンレー!
「エースさん、私をユリウスさんの所まで………」
――あ、間違えました!
頼む人を思いっきり間違えた。
このお方は壮絶な方向音痴である。
――つい勢いで……! 自分のあほ!
「すみません、やっぱり自分で行けるのでこの事は忘れ……」
「なんだ、ユリウスのお客さんか!それなら俺が責任を持って送り届けてあげなきゃな。知らないかもしれないけど、俺、ユリウスとは結構仲良いんだぜ?」
存じ上げております。
ええ、それは良く存じ上げております。
そういう問題ではないんですよエースさん。あなたの案内が物凄く危険なことを知っているんですよ。
「今もユリウスのところに行く途中だったんだ。ハートの城を出てからまだ××時間帯くらいだから……運が良ければ、あと1××時間帯もすれば着いているよ」
「結構です」
遭難してるじゃないですか。絶対に嫌ですよ。
私に進んで厄介に飛び込む勇気はない。
「遠慮するなって! 俺は騎士だぜ? 森で困ってる頭の弱そうな女の子は助けてあげなくちゃ」
――誰が頭弱いですって!?
こんなにまともな子にそんなこと言っていいと思っているんですか!
「じゃあさっそく出発しよう」
そう言ってエースさんは私の腕を掴んだ。
なにするんですか、という非難をこめてエースさんを見る。すると、
「迷子にならないように、な?」
一言言わせてください。
おまいう。


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