私は歩く歩く歩いて

In ハートの城の廊下。

「ペーターさーん!」
ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺ
「寄るな」
「寄りません」
待機。ペーターさんとかなり離れた位置で待機なう。
「……」
「……」
「……持ってきなさい」
ペーターさんが折れた。私は廊下をぺたぺたぺたぺ
「それはもういい」
はい。それでは例のモノをぺらりと広げますね。
「前回からの改良点なんですけど、時間帯変化が少しわかりにくかったので色を工夫してみました。あと、地図がより正確になりました!」
ペーターさんめっちゃ嫌そうに受け取るのやめてもらっていいですかね? そりゃ雑菌ですけど! 生物なので雑菌の塊ですけど! 今度からアルコールに浸した状態でお渡しますか……。
「それにシフト表を手に入れましたのでお付けいたしますね」
「手に入れた?」
「はい」
「彼女から?」
「はい!」
「……」
微妙な表情のウサギさん。いやー「同じ境遇の女の子」の立場を舐めないでいただきたいですね。こんなもんちょろちょろのちょろですよ。へへん。どやあ。
その後は情報共有を。最近彼女の様子が少し違うことは彼も承知しているようで、その話になった。
「あのクソ帽子屋がいけないのでしょうか。殺しますか」
「ブラッド、流石というべきでしょうか。情報を全く落とさないんですよね。一応エリオット、ディダム、構成員さんたちとの好感度見返りとかで補ってますけど……」
全然足りない。ええもう全く足りません。
「そういえば、あなたから夢魔の話を聞きませんね。彼は何も情報をくれないのですか?」
「それが……」
夢を覚えていられないということをかくかくしかじか、四角いダイヤ。トランプ大集合! 特に意味はないが言いたくなっただけです。気にしないでください。
「へぇ。思考能力だけではなく記憶力もないんですね。これだからアリス以外の余所者は」
「グサッ。かよわい私の心から大出血ッ」
夢を覚えてないんです〜って話でこんな罵られることあります?
「じゃあペーターさんは覚えてるんですか? メアさんなにか言ってました?」
「……教えません」
「うそ〜〜〜〜!? ね〜〜〜〜仲良くしましょうよ、アリス同盟結んでるじゃないですかぁ〜〜〜教えてくださいプリーズプリーズ!」
「うっとうしい。騒がないでください。撃ちますよ」
いい子なので黙りました。まぁ死んだところで繰り返すだけなのですけど。
――……えっ?
――???
「……ええと、それとなくブラッドには聞いてみます。徒労予感がしますがね!」
「貴方のやることに意味のあることの方が少ないんですから、安心して空回りしてきて下さい」
「うわぁとっても元気の出る励まし言葉ァ! あざまる水産でーす」
しっしっとされたのでおとなしく退散、ハートの城を探索します。今日は3階、英国的には2nd floorを調べつくしましょうか、と意気揚々と駆ける。その時廊下の奥にちらっと人影が。あれは……。
「わーキングさんおはようございます! お元気ですか!」
「おお、ゆり。久しぶりじゃな」
攻略対象にすら入れてもらえない、影の薄すぎるキングさんに廊下でばったり出くわしました。役なしさんよりは情報を落としてきてくれる可能性も高いですし、他の方と同じように会いたいのですけど。
――なぜかあまり会えないんですよねぇ、お仕事で忙しすぎるのが原因でしょうね。
――ビバルディ関連とかなら強いはずなんで積極的に通いたいところであります。
「お疲れ様です。休憩中ですか?」
「いや……今は……なんというか……」
めっちゃ隠れてさぼり中でした。いやぁお仕事忙しいですものね、気持ちはよくわかる。
――もしかするとこの世界この人の夢かもしれないですし(根拠:鏡の国)。
――踊ってなぐさめましょうか? No……それはアザトースの方……。
ポーチの中から飴玉を取り出して彼に渡した。クインロゼ必殺、札束(プレゼント)殴り。
「私からの、えっと……仲良しの気持ちです。ご自愛下さい」
「優しいなぁ……」
えへ。みんな知ってるとは思いますが、王族がこんなよくわからん小娘からもらった食べ物を摂取しちゃいけないんでマネしないでね! ちな、この王様はめっちゃ食べてる。……見てると私も食べたくなりました。
廊下の端っこ、二人でころころと飴玉を舐めましたとさ。


[ 38/39 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -