私は歩く歩く歩いて

射撃場です。レアな場所ですね。自由探索できると、こういうレアなところがしっかり探索できるのが嬉しいですよね。TRPGが流行るわけがわかります。
「きゃー! ボリスかっこいー!」
防音ヘッドフォンをつけながら見事な的あてを見ている。素晴らしい。射撃ゲームのエイムが苦手で接近戦を選択するタイプのプレイヤーのわたくし、感嘆。
「次はゆりの番だよ」
さて、持ち歩くのなんか嫌でボリス御用達射撃場においてもらっていたこのかわいいベレッタナノを構えます!
「うん、反動は逃がせるようになったね。次は的の種類を色々試してみよう。動くやつやったことなかったよね」
「はぁい!」
「……珍しいな。女なのに銃を撃つのが好きなんてよ」
と、こぼすのはついてきていたゴーランド。この、「他キャラ元々いたけど、途中から突然登場するやつ」を初めてやってみたんですけどゲームシナリオっぽくていいですね。
「好きというか、できるようになりたいだけですよ。何が起こるかわかりませんからね」
あと、かっこいいのと、実践がレア体験なので。銃推奨な自由の国でもこんなバンバン撃てる機会そうそうないですよ……すごいです……。
その後もめちゃくちゃみっちり練習した。ゴーランドは帰った。あの状況演出練習のためだけに登場させてしまいました。
「そろそろ持ち歩いてみる?」

「大丈夫なんですか?」
「うん、護身としては十分だと思うよ。銃に慣れてる奴には歯が立たないだろうけど、ちょっとしたチンピラくらいなら……」
いやチンピラは自主的な戦闘訓練を受けていますし結構強そうなのですが。え、私を買いかぶりすぎではないのでしょうか……。だけど……。
「じゃ、じゃあ……も、持ちます……ソワソワ」
わくわくに勝てなかった。わくわくは正義だ。ミスターわくわくが世界を支配するんです。
「一応ポケットに入る大きさだけど、あんまりお勧めしないかな。ホルスターでも見繕ってあげるよ」
ホルスター!?!?
――うわ! うわ! ゲームでみんながつけてる奴ですよね! すごぉいです! げーむじゃないですか! ゲームだった!
「お願いいたします! 全然わからないのでおまかせします!」
わくわく!

「本当にいろいろありがとうございました!」
ボリスにばいびーをし、ただいまでーす、と塔にかむほーむする。ユリウスは休憩中だったみたいで椅子に座ってコーヒーを嗜んでいらっしゃる。今日はすっぱめな香りですね。後でしっかり豆確認をしてリストに書き込まないと。
ユリウスの目の前でカバンをごそごそする。
「ボリス様からいただきました(はぁと)」
そういってカバンから銃を取り出した。まだつけて歩く勇気がなかったのでカバンに入れておいたのだ。
「お前……本当に……本当になんというか……」
頭を抱えるユリウスの横でホルスターをつけて銃を入れる。やばやば、超カッコいいんですけど。は? 天才なんですか? やばいですよ。気分だけ歴戦の勇者ですよ。
「……撃てるのか?」
「射撃の天才から直々にお教えいただきました」
不安だな……ともらすユリウス。気持ちはとてもよくわかる。私も正直不安。
「もちろんやむを得ない場合しか使用しません。アリスに誓って」
「面倒ごとは起こすなよ。責任は取らないからな」
「もらっちゃって今更なんですけど、こういうの持って他の領土行かない方がいいですかね? 敵意ありだとみなされちゃったりします……?」
今更だな、と苦笑いされる。
「初対面ならともかく、もうそれなりの時間を過ごしてきているだろう。この期に及んでお前を敵だと認識する奴はいないはずだ」
「そうですね。何か言われたら言われたときに考えます」
やはり「時間」がものを言う、この世界。
――素晴らしい、通い続ける私の判断は間違っていないのです。
――結局私のゲームに好感度が必要なのかどうかがわからないままですが。
にこにことする私をユリウスが鼻で笑ってくる。
「まあ、お前ごときが少し武装したところで何の脅威にもならないしな」
妖怪:一言多い。


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