とある少女の処世術

ずーちゃっちゃーずーちゃっちゃーちゃーらららー。おなじみのメロディ。
「また来たの? あんたも暇だね」
私はボリス氏のところへとやってまいりました。かなり足を運んで、それなりの好感度は溜まっております。あと暇ではなく、情報収集のためなので悪しからず。
私達が話すことと言えば遊園地のこと、アリスのこと、ゴーランドのこと、アリスのこと、アトラクションのこと、アリスのこと、アリスのこと、アトラクションのこと、アリスのこ以下略。7割アリス。
この猫さん、さすがいろいろな所をうろうろしているだけあって変な所(道とか)でのアリスの目撃が多くてとても助かります。
「それでさ、アリス、銃を撃ったことがないんだって。で、俺が……」
はい流れが決ました。待ち続けていましたこの時を。倒置法。
さて、私の計画をお話ししましょう!!!
余所者はめちゃめちゃ非力です。役無しなんかよりも超絶非力です。なんてったってすぐ死んで代わりはいませんので。そこで余所者は役もちに守ってもらうアリスのように運よく可愛く生きていかねばならないのですが……私の場合、運がいいとは断言できないこの世界。歩き回っている→役もちと居る期間が短い→それだけ危険に合う確率が高い、ゆえに私は結構危ないと思うんです。
そこで、そこでです。自衛というものを必要最低限身に着けたいのですが所詮一般ピーポー、どなたかから教えてもらうのが一番。どなたか→ボリス、というわけです。なんとなく必然ですね。あわよくばボリスから銃が欲しい。収入にあてがあるとはいえ、現在は無一文状態。
とりあえず話題を私にそらす。出動! 隙あらば自分語りスキル!
「へぇ〜でもそういえば、私も今丸腰ですね〜」
「余所者ってそういうもんなの? あんたも武器持ちたくない感じ?」
「ただ純粋に持っていないだけで、欲しいなとは思ってます」
「あ、そうなんだ。ふーん」
しっぽがピーンとしだしたので、作戦がうまくいっています!
「ちなみにあんたの好きな銃は?」
「ウッドのMK14まじネ申、チョーかっこいいです。でも腕力のない乙女が持ち歩くには恐ろしきかな重量……」
「確かにそのまま持ち歩きは厳しいね」
ボリスは笑った。そのまま? あぁ、なるほどバイオリンとかに擬態(?)させればいいのか役もちズは。いいですねぇ。
「なんでまたMK14? それもウッド指定ってことは、性能重視じゃないの?」
「憧れの方が使ってらっしゃる銃がよく似ているので。火縄銃なんですけど」
私の憧れの方の夢小説(もどき)も公開しているからよろしければ是非、この夢小説(もどき)の一つ上にあります! 突然の宣伝でした。
「火縄銃の……M14……?」
猫が考え込んでいます。大丈夫です、私もあれが火縄銃だとは全く思えません。
「アサルトライフル系はすこ〜しだけかじったことがあるのですが、拳銃系はまったくの無知でして、よかったら教えて下さい。護身のために持とうかなって考えているんです」
と究極のぶりっ子を発動しておく。まぁ、なんにせよ実銃は全くのド素人に近いですしね。日本国に住まっているのでモノホンと対峙する機会はそうそうないです。
「来て。俺のコレクション見せてあげる」
二つ返事通り越して一つ返事で案内してもらった。ハッピィ!

「拳銃かー。持ち歩くならポケットピストルかな」
ポケットピストルは私が思っていたピストルより二回りくらい小さかった。
「わ〜ちっちゃいです! か〜わいい!」
「ちなみに、あんたが今まで撃ってきたのはどのあたり?」
――銃社会前提でお話が進んでおりました。
いっけな〜い、誤算誤算。
「私の世界では、私のような小娘が実銃を持てなかったんですよ。なので触ったり撃ったりしてるのはもっぱらエアガンで……」
「そっか。じゃあ全く初めてなんだ」
ボリスはわくわくしている。わっかるぅ、布教相手を見つけた時のムーヴメント。
「いろいろ撃ってみて、合うやつを探すのが一番いいよ。スミスとかおすすめだけど、どう?」
そういってボリスは一つの銃を私の手に落とす。
――ロマン! ロマンの形をしています!
「ひょえ〜〜可愛いです!」
――でもロマンすぎてちょっと私が持つには気が引けます! とても可愛いんですけどね!
他にも色々見せてもらうことに。
「これはトリガーが……」
ボリスは楽しそ〜にあれやこれやと喋っている。語っている。
種類は違えど同じオタクとして、同士が楽しそうにしているのを見るのは至極幸福極まりないことなので楽しく鑑賞しておきます。話は半分くらいわかってないです、しゅん。勉強しよ。
見て回っている中で、ふと私はひとつに目をとめた。
――あ、これ……。
「綺麗です、これ」
「それはベレッタだよ、ベレッタナノ。突起物をなくしたフォルムで、引っ掛かりにくい」
「ベレッタの、ナノ……」
ベレッタさんはエアガンで何回かお世話になったことがあった。美しいフォルムである。流石。小さくなっても美しい。
「ダブルアクションだから初心者じゃ的を合わしづらいかもしれないけど、まぁ、ちょっと練習すれば大丈夫だと思うよ」
「ダブルアクション?」
「トリガーにセーフティがついてるんだ。ここまでが軽いけど、ここから重くなって……バン!」
「おお! なるほどわかりませんが、指の筋肉が大事というわけですね?」
「ちょっと違う」
すみません。よくわかりません。
「まぁ、でも直観は大事だからさ。よかったらコレあげるよ。武器持ってないの危ないからさ」
「えっ」
――やりぃ、です。
思惑通り、ありがとうございました。でも一応謙虚を装おうと思います(悪い笑顔)。
「でも、撃ったことないし……いきなり持つのは怖いです……」
「じゃ、練習する? 付き合ってあげる」
どうしましょう! すっかりチェシャねこねこちゃんを騙す悪い女になってしまっています……およよ(満面の笑み)。


「ただいまです〜」
チェシャキャットを騙しにだまして銃の練習の約束を取り付け、そのあとビバルディに顔を売りに行き、次はアリスに会いに行く予定だ。アリスとの約束にはあと2時間帯あるから、少し休めるだろう。
私は体の疲れに従って床に倒れこんだ。ちょっとだけ眠るのは許されると思います。寝ます。
「せめて机で寝ろ。床が汚れる」
上から声が降ってくる。ユリウスだ。あと、そこは「服が汚れる」です。
「……なんで汚れが綺麗になるくせに汚れに対しての価値観があまり私の世界と変わらないのかつくづく疑問なのですもしかして全員汚れが綺麗にならない世界からの価値観を引きずっているんですかそこらへん教えていただ」
「床で寝てろ」
お言葉に甘えて床にうずくまる。ねむ……。
「お前はいつも変な体制で寝るが、何か特殊訓練でも受けているのか?」
「実は……スリーピングスクールに通っていて……」
ボキャブラリーもどんどん眠りに引き込まれていく。
「時間帯変わったら……起こしてください……」
むにゃ。アリスかわいい。

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