とある少女の処世術

In ハートの城
「なんと、おまえがか」
「はい! 私が! 淹れました!」
にこにこ顔で女王陛下が紅茶を飲み干すのを見る。
――薔薇園姉弟は紅茶で落とすべし、です。
お約束お約束。
ブラッドから紅茶の本をお借りして色々知識補充して練習してから来ました。
ビバ様がご機嫌に紅茶を飲んでいる。
「ほら、おまえも座ってお飲み。」
「わぁい! 目に優しい茶菓子!」
というわけでつかみはチョベリグ、風向き良好!
あとは聞き上手として時間を過ごせば、好感度アップ間違いなしです!
「ビバルディ、最近面白いことありました?」
「面白い事……」
にこにこで話を振る。
「おお、そうじゃ。つい一時間帯前な、キングの愛人をまとめて3人も殺してやったのじゃ」
ミスりました。
女王陛下舐めてました。
「へー(汗)! 爽快ですねー(棒)」
「そうであろう? それに、ついでにできの悪い兵士も……」
やべぇです、この流れは駄目です。
――いや別にその、同情してとかそういうわけではないんですけど!
――アリスに嫌われてしまいます! こんな話してたらアリスとのフラグが危険!
万が一聞かれたら……と思うと冷や汗が出る。
楽しそうに最近購入したらしい新しいギロチンの使い心地を教えてくれている。
「それで切れ味が良いから、首の表面が滑らかでな。そこから滴る鮮血のなんと美しいこと……」
「ああああ、赤いと言えば、ここの薔薇って真っ赤ですよね! お庭の薔薇はもちろん全部綺麗ですけど、特に机が置いてあるところだったり城に近いところって特に赤い気がするんですけど、品種が違ったりするんですか?」
必死に話題を変えてみた。強引だが一応、前の話題とつなげてはみた。一応。
「よく気が付いたな」
驚いた顔のビバルディ。どうやら成功したようだ。
これは運が良かったとしか言いようがない。
「全体的に庭に植えてあるのは病気や虫に強いものだが、よく目につく場所にはより見栄えの良いものをな。ここよりもっと素晴らしい薔薇を植えてあるところもある」
――あそこですかねーあのー可愛い小屋があるところらへん……。
想像が膨らむ。是非その場所まで通していただける間柄になりたいものだ。
「へぇ……考えられているんですね。具体的にはどの品種を?」
メモしておきましょう、とノートを取り出した私を見て、ビバルディが口角を上げる。
「おや、薔薇に興味があるのか? 」
ビバルディが再び楽し気に話し出すのを見て、私も心から安心する。
「あ、紅茶お代わりいります? ビバルディのためなら何杯でも淹れますよー」
薔薇と紅茶の香りに包まれて、私達はおしゃべりをつづけた。
――よーし好感度+3くらいは見込めますね、これ!

「というわけなんですよねぇ! 余裕ですね!」
余裕ですね! いやー! 乙女ゲームの選択肢だけは間違えない女!
「二つを紅茶で制圧するとは……」
ユリウスが呆れた表情をしていますが、違いますからね、ここはわたしを尊敬する表情するところですからね。
「この世界、嗜好品が物を言いますからね。ハマらせてくれたブラッドに感謝です!」
紅茶けっこう万能だからあなたもワンダーワールドに来たときのためにハマっておいて損はないですよ。私の推しはダージリン(セカンド、オータムナル)とルフナですよろしく。
「ただ定期的に浮上するのは、紅茶とコーヒーどちらが強いか論争なんですよね。コーヒーは嗜好人口が多いんですよ。ユリウスを筆頭に、グレイ、ピアス、ナイトメア(?)どの他諸々で、紅茶はブラッドとビバルディが主なんですよねぇ。でもやっぱりこう、ブラッドとビバルディ抑えとけば正直何とかなるだろとは思うんですよ。役持ちの中でもかなりこう、気まぐれな方なので絶対的に信頼を得るためにはきっと紅茶は不可欠なんですよ。でも見てくださいコーヒー派の顔ぶれ。ユリウスとナイトメアが居るんですよ。時計屋と夢魔ですよ? カード的に、はちゃめちゃに強いんですよね。ここで重要になってくるのはナイトメアが本当にコーヒー派と言えるのかどうかですが、クロアリでの記述を見るに……」
ユリウスはすごく微妙な顔をして私の話を聞いてくれていた。
「あと残るはエースと双子なんですけど、時計塔滞在してる時点でエースは勝ったようなものですし、双子は適当にこう、遊びにつきあってあげればいけると考えております! オッケーバブリーケツカッチンです!」
「よかったな」
「よかったです! あとはボリスから適当な銃をもらい、自己防衛できるように適当な人から色々学べばいよいよペーターさんのところに共同戦線を結びに行くのです!」
さぁ、まだまだ下準備は残ってるぞ! ファイトー! いっぱーつ! 私!

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