ありすと!

世間話をしている。
愚痴をきいてくれますか。コイツ、私のあからさまな誘導尋問に引っかからないんですよ。
それどころか私の情報引き出してくるんですよ、凄いですよ。このトークスキル、身に着けたい。
ひどい……ひどいです……私はただあなたのことが詳しく知りたいだけなのです……けっして怪しいものでは……ぐすん。
そんなこんなで楽しい時を過ごしていると、ドアが控えめに叩かれてメイドさんの声がする。
「お茶をお持ちしました〜」
――いつの間に呼んだんですかーー!?!?
用意が良い。流石スーパーダーリン。アリスの夫となるにふさわしい男。好き。
感激でまた拝んでいると、お茶を勧められる。
「良ければどうぞ」
「ありがとうございます」
湯気が立ち上るカップからそろりと一口。
「美味しい……!」
――とろけるおいしさ……さっすがです……。
「ダージリンのファーストフラッシュですか?」
「……よく分かったな」
ブラッドが少し驚いた顔をした。
「そう、ファーストフラッシュだ。このグリニッシュな香り……」
「水色も澄んでいて綺麗ですね。とてもいい茶葉なのでしょう……」
「ゆり、なんでそんなに紅茶に詳しいのよ!?」
ブラッドさんに嵌められまして。いやぁ、界隈ではあるあるネタですよ。
ボスの影響力凄いですから。紅茶と薔薇にドハマりする人何人も見てますから。
「この世界は繊細な味が分からない無粋な輩が多い。君のようなお嬢さんは貴重だ。いつでもお茶会に来たまえ」
――はーーーーいちょろいちょろいちょろすぎますよブラッドさん!!!
はいこれで後は何度かお茶会に招かれてニンジン料理を処理すれば「(都合の)いいお客さん」になれますね。
それにしても。
「あの、ブラッドさん」
「ん?」
「『お嬢さん』は私にはちょっと無理が……」
中流社会で育った何の変哲もない人間なのでアッパーな方たちと一緒にされると心苦しいのです。
きっと、ブラッドさんほどの慧眼なら私がお嬢様でないことに気づいているはずですし。
「アリスと被りますし、できれば止めて欲しいです」
その素晴らしいお声でのお嬢さんはアリスのために取っておいてあげてくださいませ。
「それもそうか。では名前で呼ぶとしよう。ゆり、私も呼び捨てにしてくれて構わないよ」
「はい、ありがとうございます!」
「ゆりって世渡り上手いわよね……」
「単にテンションが高くて、何も考えられてないだけですよ」
そのとき、どんどんと扉をたたく音がした。
「ブラッドー居るかー?」
えーりおっとのお声!!! うさぎのわんわんですねぇ!!!
「ちょうどいいところに来た。入りなさい」
どオレンジのもふもふ耳が室内へと入ってくる。
「エリオット=マーチ。これも帽子屋ファミリーの一員だ。エリオット、こちらは余所者のゆり」
「余所者!?」
なんかめっちゃ驚かれてます。
「初めまして」
「ええ!? 余所者!? 二人目!?」
「そうらしいです」
「へぇー……珍しいこともあるもんだな。余所者、それも二人」
めっちゃ私とアリスを見比べていらっしゃいます。
「よろしくお願いしますね、エリオット」
「おお、よろしくな! ええと……」
「ゆりです」
「ああ、ゆり!!」
にこーっと笑ってくださいました。わんわん。
とはいえまだ今は『ブラッドが紹介したやつ』ということで信用を得ている状態なので、早めに好感度上げに通わねばなりませんね。
――帽子屋屋敷なんやかんやと表面上はちょろいんですよねぇ!!!
表面上はですけどね! なんかあったらそっこーで殺されますけどね!

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