ありすと!

「陛下、アリス様がいらっしゃっております」
「通せ」
凛としたお声が聞こえた。美人さんの気配にきゅんっ。
アリスが行ってくるわね、と目配せをしてくれた。
「ビバルディ!」
「おお、アリス! わらわに会いに来てくれたのじゃな。間を開けず来るとはなんと心がけの良い」
私は扉にぴったりくっついて、二人の話を聞く。
「実はね、ビバルディに会わせたい人が居るの」
「わらわに?」
「本当は謁見室で紹介するのが筋だけど……此処で良い?」
「何奴なのじゃ、わらわに会わせたい奴というのは」
「それがね、余所者なの。私と同じで」
「余所者? お前の他にか?」
「そう、余所者。その子、扉の向こうで待ってるのよ。良いかしら」
「良いだろう。……中に」
――はぁぁ……幸せ……。
「あの……陛下がお呼びです」
「あっはい!!!」
肩を叩かれて夢見心地から覚めた。
姿勢を正して、女王陛下の前に出ていく。
「失礼いたします」
「名は」
「ゆりです」
「……面白い格好をしているな」
私をじろじろと眺めてから彼女はそう発言した。
「至って普通のジャージです陛下」
――ちなみにあまり役立たない情報を提供するなら某チーターのブランドです。
――まぁ、この世界でジャージは確かに面白いですよね。
「お前も、余所者なのだな?」
「その通りです」
「ふむ……」
また女王は私を観察する。
もしかしたら、心臓が動いているのをかんじているのかもしれない、とふと思った。
「なるほどな、面白い」
どうやらお気に召したようだ。ひとまず安心。
無条件での興味のもたれ方、流石の余所者効果である。
「どこに滞在しておるのじゃ」
「時計塔です」
「時計塔とな。あの偏屈な男をどうたらしこんだのじゃ? ふふ、ますます興味深い子だね」
「……ありがとうございます」
「お前もアリス同様、特別にわらわの名前を呼ぶことを許そう。ビバルディとお呼び。それから敬語もなしで良い」
「ありがとうございます、ビバルディ。ですが敬語は……」
「メガネで敬語なぞ、どこぞのウサギとおんなじではないか」
―……はっ!? 確かに!!
やばい、キャラ被りだなんてあってはならないことなのに!!
「ほれ、普通に話してみぃ」
「駄目ですお里が知れ渡るとともに怒涛のネットスラングが飛び出してきますどこに生息してるのかがばれてしまうのでとてつもなく駄目です!」
たのみこんで、敬語は許してもらいました。

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