誰得ですか?

「方法は私が探っておく。お前はとりあえず他の領地に滞在していろ」
「どうしてここに居させてくれないんですか!?」
「どうしてもこうしてもない。ここは余所者が居て良い場所じゃないし、私は一人が好きだ」
つれなくユリウスさんは言う。
時計塔以外で滞在場所に選びたいところなどない。
というか、ほかの領土は確実に死亡フラグが立つ。
「ユリウスさんは、私が殺されても良いって言うんですね……!」
「は? どうしてそうなる」
「帽子屋屋敷に行ったとしましょう。アリスなら、門番に見つかる→エリオットさんがくる→ブラッドさんが来て助かる」
「どうして帽子屋が来たら助かるんだ」
「いろいろあるんですよ。おそらく私なら門番が見つからない→即詰みか、双子に見つかる→殺される、もしくはエリオットさんがくる→殺されるの3つに1つですよ。あの素晴らしき帽子屋屋敷オープニングのタイミングはアリスだからこそ起こせたのです」
「……はぁ、そうか。ではハートの城は?」
あきれたようなユリウスさんですが、私にとっては重大な問題なんですよ。
「城なんて怖すぎて行けません。ペーターさんに会ってしまったら即ズドンでバッドエンドです。目に浮かびます」
あの潔癖症白ウサギさんが、アリス以外の余所者を良しとするわけもない。
――理想は協力してアリスをストーキングすることですけど、様子を見ながら切り出せるか……。
とりあえず、滞在場所にはしたくない場所である。
「遊園地は耳が痛いので嫌です。帽子屋屋敷も遠いですし」
「帽子屋屋敷に遠いと、どうして嫌なんだ?」
「アリスをストーキングするためです」
一瞬、時間が止まった。
「……は?」
「私の世界ではやれツ×ッターやらラ×ンやらと情報手段がたくさんあるのですが、電話機しかないワンダーワールドにおいて情報の早さは距離に比例します。いいですか、ストーキングというものは情報戦です。ターゲットがいつ! どこで! 誰といるのかという情報を常に把握していなければなりません! そして、ワンダーワールドの独特の時間の流れ方、すなわち、時間帯がくるくると不規則に変わることにより、アリスの今の地点を把握するのにはもちろんのこと情報の速さが最重要でっ……」
「……」
――アリス可愛いですアリス!!
ただひたすら頭の中の文字を音に変換する作業を続ける。
こういう意識がどっか行っちゃっているときって、変に楽しいんですよねー。
私はその興奮に身を任せて、つらつらとストー……こほん、アリスの素晴らしさについてを語った。
そして。
「……話は済んだか」
「いえ、まだ……! アリスの可愛さについてが……まだ!」
――何なら一日中でも語っていられますよ私!!

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