6 組み分け帽子

1−6 組み分け帽子

 扉からはエメラルド色のローブを身にまとった女性が出てきた。黒髪で背が高く、その厳格そうな顔立ちから怖い印象が与えられた。
「マクゴナガル教授、イッチ年生たちです」
「ありがとう、ハグリッド。ここからは私が受け持ちます」
 マクゴナガルが大きく開けた扉を通ると、ここは玄関ホールだった。壁は石でできており、それはどこまでも続くかのような天井に繋がっていた。大きな大理石の階段が正面に見え、私はその豪華さに息を飲んだ。皆はホールを横切りぎゅうぎゅう詰めで小さな部屋に入った。
「ホグワーツ入学おめでとうございます」マクゴナガルが言った。
私は何も聞き逃すまいと彼女の言葉に集中した。
「新入生歓迎会が間もなく始まりますが、大広間の席に着くまえに、皆さんは所属する寮を決めなくてはいけません。寮の組み分けはとても重要な儀式です。ホグワーツにいる間は寮生があなたたちの家族のようなものになります。授業では寮生と共に共に勉強し、就寝も寮、自由時間も寮にある談話室で過ごすことになります」
「寮はグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの4つがあります。それぞれに輝かしい歴史を持ち、それぞれから偉大な魔法使いや魔女が卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんの良い行いは所属する寮の得点に加点され、なにか規則違反をした際には寮の得点から減点されます。学年末、最高得点の寮には大変名誉のある寮杯が贈られます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとっての誇りとなることを期待しています」
「間もなく組み分けの儀式が全校生徒の前で始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておくように」
 私は自分のマントがきちんと結ばれているか、髪が変な方向にうねっていないかを確認した。
「準備が出来たら戻ってきますから、静かに待っていてください」
 マクゴナガルが部屋を出ていくと、近くにいた男の子が隣の子に話しかけた。ボートで一緒に乗っていた子たちだ。
「いったいどうやって寮を決めるんだろう」
「試験みたいなものじゃない? フレッドがチョー痛いって言ってたけど、冗談だと思う」
 それを聞いたハーマイオニーが不安げな表情を見せた。
「試験? どんな呪文が出るのかしら、ルーモス? アロホモラ?」
「やめてよ。余計ドキドキするわ」
 組み分けは帽子によってなされることを私達は知っていたが、それがどういったものなのかは知らなかった。私は耳をふさいでハーマイオニーの声を頭から締め出したかったが、いつ先生が戻ってくるかがわからなくてやめておくことにした。
「問題、扉を塞ぐ呪文は?」
「コロポータス」私は即答した。
「よろしい!」
 彼女は満足そうに笑った。目線を上げるとさっき喋っていた赤毛の男子が私達のほうを変な顔で見ているのに気が付いた。
 ハーマイオニーはぶつぶつと呪文を言い続けていたが、それが途切れたのは私達の後ろの壁から、たくさんのゴーストが現れたからだった。私は声もなく固まり、周りの生徒たちも息を飲んだ。
「もう許して忘れなされ。彼にはもう一度だけチャンスを与えましょうぞ」
「修道士どの、ピーブスにはもう十分すぎるほどのチャンスを与えていませんか? 我々の面汚しですし、それにやつはご存知のように本当のゴーストですらない――おや、君たちここで何をしているんだ?」
 ひだ付き襟が特徴的なゴーストがこちらにやってきたが、答える者はいなかった。
「新入生か!」太った修道士のゴーストが言った。
「これから組み分けされるところじゃろう」
 近くにいた生徒が何人か頷いた。
「ハッフルパフで会えるとよいな! わしはあそこの卒業生なんじゃ」
 マクゴナガルが扉を開けて戻ってきた。
「さあ行きますよ」
それに気づいたゴーストたちが部屋から壁を抜けて出ていった。
「組み分け儀式が間もなく始まります」
「さあ、一列になって。ついて来てください」
 ハーマイオニーに続いて私は玄関ホールへと進んだ。大広間の二重扉は新入生が垂直に並んでも通れそうなほど大きかった。
 大広間に入った私はそのあまりに不可思議な光景に目を見開いた。何千ものろうそくが空中に浮かんでいて、空を映した天井には星が瞬いていた。
 私達は一列に並んで、上級生と向き合った。
「本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」
 ハーマイオニーが上を見ながら得意そうに言った。
「私も読んだわよ」私は緊張で震える声で囁いた。
「僕知らなかった」私の後ろに居たネビルがつぶやいた。
 マクゴナガルが新入生列の前にスツールを置いた。その上には絵本の中の魔女がかぶっていそうな先のとがった帽子が置かれていて、それはかなり古びていた。それが組み分け帽子であることに私は気づいた。
私がじっと見つめていると、組み分け帽子はピクリと動き、そして高らかに歌い始めた。

Song by Sorting Hat 略
(すみません力尽きました。気が向いたときに追加します)

 歌が終わると、広間にいた全員が拍手を帽子に送った。
 私は、もし帽子と話が出来るならレイブンクローに入れてもらうよう頼もうと思った。今の歌を聴いて、やっぱりレイブンクローが一番勉強しやすそうだと考えたからだ。私が帽子に自分がレイブンクローに向いているか――もちろんいかに将来性があるか――をどう伝えようか悩んでいると、マクゴナガルが羊皮紙を持って前に出てきた。
「名前が呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けてください」
最初の生徒が呼ばれた。
「アボット、ハンナ!」
 どうやらファミリーネームのABC順らしいと気づき、私の鼓動は途端に早くなった。すぐに私の番がくる。私は金髪の女の子が帽子をかぶって椅子に座り、ハッフルパフに組み分けされるのを黙ってみていた。
「アーデン、メアリ!」
 私はほんの少し息を吐いて、椅子に置かれた組み分け帽子へと近寄った。組み分け帽子のふちを持ち、いよいよかぶろうとしたところで頭上から大きな声が響いた。
「スリザリン!」
 私は心底驚いた――スリザリンは魔法族であることを誇りに思う寮のはず、どうして私が?――テーブルからの声に、私は我に返った。
「スリザリンはこっちよ!」
 緑色のローブを着た上級生が大きな声で叫んだ。右から二番目のテーブルだ。
「スリザリンへようこそ」
「おめでとう! ここ開いてるわよ」
 上級生たちが席を開けてくれたので、私はそこに座った。そのあとの何人かは自分の緊張の余韻のせいであまり覚えていなかった。ハーマイオニーの名が呼ばれると私はまた自分の時と同じように緊張した。
「グリフィンドール!」
 ハーマイオニーは左端のテーブルに駆け寄っていった。ネビルまでもがグリフィンドールに組み分けされ、私は新しく友達を作らなければならないことが決定した。
そう決まってしまえば、あとは腹をくくるだけだ。同じようにスリザリンに組み分けされた子に拍手を送ったり、上級生が長く時間のかかっている生徒を「組み分け困難者か?」などと煽ったりしているのを楽しく聞いていた。
ハリー・ポッターが組み分けされた時のグリフィンドールのテーブルからの歓声は凄まじいものがあった。
「ちぇ、ハリー・ポッターを逃した」
 上級生たちがそう囁くのを聞いて、彼がとてつもなく有名であることを実感した。
 最後に黒人の男の子がスリザリンに組み分けされ、組み分けの儀式は終わった。来賓席の真ん中に居た豊かな白髪の老人が席を立った。アルバス・ダンブルドア、ホグワーツの好調だ。
「入学おめでとう!」
ダンブルドアはにっこりと笑って腕を大きく広げた。
「新入生諸君、ホグワーツへようこそ! 歓迎会を始める前に、二言か三言、言わせていただきたい。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」
 私はそのあまりにも奇妙な開会のあいさつに吹き出し、ダンブルドアへ拍手を送った。こらえきれずにくすくすと笑っていると、突然目の前の金の皿に山盛りの食べ物が出現した。
「どうなってるの?」
 私は驚いて隣の上級生の腕をつかんでしまった。彼はこういうもんだよ、と笑った。
 私は料理を少しずつ自分の皿によそった。ハーマイオニーの家で教えてもらった最低限のマナーを忘れないようにしながら、私は次々に口に運んだ。もちろんその間、席が近い上級生と笑顔で話すことも忘れなかった。
「もう教科書全部読んじゃったの?」
 私と話している上級生が驚いた反応を見せた。
「これは期待大だな! じゃあもう呪文は試した?」
「あ、はい。簡単な物をいくつかですけど」
「おい、今年は秀才が入ってきたみたいだぞ」
 大きな声で男子生徒たちにはやし立てられ、私はどう返していいのかわからずにそわそわした。
「あなた凄いわ、もしよければ私にも勉強を教えて!」
 向かいの少し離れたところにいる、まっすぐな黒髪をした女子が話しかけてきた。
「私も新入生なの。コーディリア・シャフィクよ」
「メアリ・アーデン。こちらこそ、友達になってくれると嬉しいわ」
 立ち上がって手を伸ばし、彼女と握手をした。
 デザートを食べ終え、しばらくすると皿の料理が消えた。ダンブルドアが再び立ち上がり、大広間はしんと静まった。
「エヘン――さて、皆がよく食べ、よく飲んだところでもう二言三言だけ。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある」
「一年生に注意しておくが、構内にある森には入らないように。これは上級生の何人かにもよくよく言っておかねばならぬな」
「管理人のMr.フィルチから、授業の間に廊下で魔法を使わないようにという注意があった。クディッチの予選が2週目にある。寮のチームに参加したい人はマダムフーチに連絡するように」
「最後に、とても痛い死に方をしたくない者は、今年いっぱい四回の右側の廊下に入らぬよう」
 少数の生徒が笑ったが、私はその場所を覚えるので必死だった。でも一体、四階には何があるのだろうか。想像は膨らむばかりであった。
「では、寝る前にみなで校歌を歌おうかの!」
 ダンブルドアが大きな声で言い、その杖を振って金色の歌詞を空中に出現させた。
「それぞれの好きなメロディで」彼は楽しそうに言った。
「では、さん、し、はい!」
私は何の曲を選んでいいのかわからなくて、ちいさな声で詩を読むように唱えることにした。

The school song 略
(すみません力尽き略)

 最後の人が歌いおわるまで待って、ダンブルドアは大きな拍手をした。
「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ」
 ダンブルドアは感動の涙をぬぐいながら言った。
「さて、就寝時間じゃ。駆け足!」
「一年生! こっちへ来て、私についてきて!」
 スリザリンの新入生は監督生について玄関ホールから地下牢を下った。じめじめと湿った石壁のまえで彼女は止まった。
「ここで合言葉を言うのよ。ノブリエス・オブリージュ!」
 その言葉に反応して、石の扉が滑るように動いた。扉の向こうは柔らかな緑色の光が溢れていた。
「こっちよ」
 スリザリンの談話室は細長く天井の低い地下室だった。壁と天井は荒削りの石造りで、丸い緑がかったランプが天井から鎖で吊るしてある。暖炉には壮大な彫刻が施してあり、談話室においてある椅子も、彫刻が施されていた。一番印象的だったのは窓で、それはホグワーツ湖の水中に面していた。
 監督生の指示に従って、私達は寝室のあるフロアで自分たちの部屋を探した。
「一緒の部屋ね、メアリ」
 コーディリアはベッドに座って私に笑いかけた。
扉が開いて、がっちりした女の子が部屋に入ってきた。彼女は先に入っている私達を見ると、挨拶をした。
「初めまして、私はミリセント・ブルストロード」
「メアリ・アーデンよ。あら、可愛い猫ね」
 彼女の抱いていた黒猫は、腕の中で静かにこちらを見つめていた。部屋にもう一人
「ダフネ・グリーングラス。どうぞよろしく」
「よろしく。他は5人だけど、ここは4人部屋みたいね」私は言った。
「人数が余ったんじゃない? 広く使えてラッキーだわ」
 ミリセントが嬉しそうに言った。
そのあと私は疲れもあってかすぐに眠りについた。

[ 7/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -