初陣

休憩時間に真白とおしゃべりをしていると、作戦部隊にいる若葉という女性が声をかけてきた。
「ういさん、衣装が届きましたわ」
「衣装!?」
真白が私よりも先に反応する。
その言葉に私は数日前のやり取りを思い出した。

若葉に呼ばれて、彼女の部屋へと赴く。
「ういです。何のご用事ですか?」
若葉はにこにこと笑っていた。
「あなたの服をね、そろそろ作ろうと思ってるの。どんなのがいいか希望があれば言って欲しくて」
私はその意味がわからなくて沈黙してしまった。
――服……って、でも、私今服来てるし……。
若葉は自分の服を見る私を見て面白そうに笑った。
「戦の時に着るものよ。だってほら……ういさんって特別だから」
それでようやく私は納得がいった。
――ああ、孫市様みたいな感じか!
――雑賀の中でも孫市様だけ格好いい格好をしてらっしゃるもんね……。
「と、言うわけで希望はある?」
若葉が聞いてくる。
希望、と言われても私は何がいい服なのかがわからない。
――この時代なら鎧……甲冑……とかだろうけど……。
孫市を思い浮かべる。あれは鎧ではないし、お世辞にも防御力が高いとも言えないだろう。
「えーっと……」
「難しいわよね。まぁ、気に入らなければ後からまた作れば良いから、こういうのがいいって、ざっくりとした希望でもいいのよ」
それからも少し悩んで私は結論を出した。
「ま、孫市様のようなかっこいい服がいいです!」
私がそう言うと、若葉は、本当にういさんは孫市様が好きね、と笑った。
「ではそのように。楽しみにしていて頂戴ね」

「ういの戦闘衣装かー、私も見たい!」
「もちろん見せるよ」
「ふふ、今すぐ着ちゃいます?」
私ははやる気持ちを抑えられなかった。
「お願いしてもいいですか?」
若葉はにっこりと笑って私達を部屋へと案内した。
服らしきものがたたまれた状態で渡される。
「着てみなよ」
「……うん」
「もし着方がわからないようでしたら、おっしゃってね」
私は部屋で服を着替えた。
「わ」
上は金属の胸当て、下は長いぴったりとしたズボンに、腰にきちんと銃入れがついている。
――こういうのリボルバーっていうんだっけ?
動くとひらりと赤色と水色の布が揺れる。
――孫市様だ。
詳細こそ異なるものの、明らかに雑賀孫市をモチーフとしたものだ。
でも、何より注目すべきは……。
――お腹……お腹が出てる……。
「……お腹が」
こちらではもちろん、もとの世界でもお腹なぞ出したことがない。
落ち着かなくてお腹をさすっていると、真白に、もう着たー? と声をかけられたので、障子をあける。
「かっこいい!」
真白は笑顔で私を見た。
「すごくお似合いよ、ういさん」
若葉も微笑んでくれる。
「バサラ持ちくらいしかしねぇけどな、そんな肌出す格好!」
真白がむき出しのお腹を突っついてくる。
くすぐったくて身をよじった。
「これで孫市様の隣に並ぶんだろ、すっげーな!」
真白の言葉に、私は一瞬固まった後、思わず泣いてしまった。
たかが服一つだが、雑賀衆として戦うという実感がわいてきてとてつもなく嬉しかった。

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